お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2020.01.23

鉛含有塗料の生産販売終了に思うこと

 1月8日に行われた日本塗料工業会(以下日塗工)の賀詞交歓会において、同会の毛利会長は「会員の皆様のご努力とユーザーの皆様のご理解によって他の国には例を見ない法律による規制に頼らず日本塗料工業会が中心となって自主管理という手法によって目的を達成できた」と鉛含有塗料の生産販売が無事に終了できたことを報告されていました。かつてこの自主規制を開始した時に本件に携わった人間のひとりとしては、これまでの道程が決して平易ではなかったことも思い出され、大変うれしく思いましたが、それと同時に小さな不安が脳裏をかすめました。今日はこの鉛含有塗料の問題について書いてみます。少し硬い話ですがよろしければおつきあいください。

 鉛含有塗料を2020年までに鉛含有塗料の生産販売を中止するという目標が掲げられたのは、2002年のWSSD(持続可能な発展のための世界首脳会議)で定めらた目標をうけ、定期的に解されるようになったICCM(国際化学物質管理会議)においてでした。特に2009年の第2回ICCMでは、塗料中の鉛が人の健康に及ぼす悪影響への 対応が「喫緊の課題」として提案され、LPA(鉛含有塗料(廃絶)同盟)が組織され、2020年までの行動計画が提起されました。

 この行動計画によれば、目標は「2020年までに、世界中で法的拘束力によって鉛含有塗料の生産販売を規制する」というものであり、「業界の自主規制による規制」では不十分と判断されていました。最終的には、経済産業省をはじめとする日本政府代表団の主張が受け入れられ、2015年第4回ICCMで、「2020 年の目標達成に対しては、規制措置を含め、効果的措置を可能な限り講じ るよう国・地域の検討を進めることを奨励する」と決議され、ともかく鉛の規制をどんな形でもよいから前に進めようということが合意され現在に至っています。

 それ以降の日本国内の動きは皆さんがよく御存知の通りです。日塗工が中心となり、業界の自主規制という形で計画に則り生産販売終了への動きが進められていきました。自主規制で進めることの問題点として「日塗工に加盟していない会社はどうするのか?」という議論もあり、それに対しては、日塗工加盟以外の塗料製造会社を数十社リストアップし、書面で協力を依頼しました。また経済産業省にも、加盟会社以外の製造・販売会社への指導をお願いもしました。それは自主規制と言えども「法的拘束力をもった規制」に近いような実効性がないと最終的にはまたやり玉にあがることはないだろうかという懸念からでした。

 日塗工の賀詞交歓会で私の脳裏をかすめた小さな不安はまさにこのことでした。ほとんどの国は法律で鉛含有塗料の生産・販売を禁止しており、その多くが意図的に鉛化合物を配合していない塗料についても、許容される鉛不純物含有量の上限値を定めています。日本の自主規制とは、実効性の点で当然ながらまだ差があるように思えます。もちろん日塗工としてやれることには限界があり、日塗工は業界団体として最善の努力をしたことに疑いはありません。しかしながら、まだ依然として残る世界標準との差は一体どうしていくのが良いのかを考える必要があるのではと感じています。関塗工事務局が口を挟めるような問題ではないことを承知で書かせていただきました。

コメント

コメントフォーム

To top