かんとこうブログ
2020.02.27
救世主と期待される「アビガン」とは
25日に発表された政府の新型コロナウイルスによる感染症に対する基本方針は、期待外れの感が否めませんが、それでもそれ以前の22日に厚生労働大臣が発表した新型コロナの治療薬として「アビガン(商品名)」の使用を2か所で開始したというニュースは、実効性が期待できる内容でした。この「アビガン」は、あまり報道されていませんが、調べてみるとなかなかの優れもののようです。
よく知られているように、インフルエンザは、自分だけでは生きられず、他の動物の細胞に入って増殖を繰り返します。この増殖過程をもう少し細かくわけると3段階のプロセスになります。
①侵入した後、ウイルスは自身の膜を除去し、細胞内へRNAという遺伝情報を放出します。(脱殻)
②細胞質に放出されたウイルスのRNAは核内に取り込まれ、ウイルスの遺伝子合成が行われます。(複製)
③複製された遺伝子からタンパク質などが作られ、新しく作られたインフルエンザウイルスは細胞の外へ遊離します。(遊離)この過程にはノイラミニダーゼというタンパクが重要な働きをします。
これまでインフルエンザの治療に使用されてきた薬は、①と③のプロセスを阻害する薬であり、M2タンパク阻害薬であるアマンタジンは①の脱殻を、タミフル、リレンザなどは③のノイラミニダ-ゼの働きを阻害し増殖を防ぎます。しかし③を阻害する場合には、ウイルス侵入後48時間以内に投与されなければ十分な効果が得られないという欠点がありました。
このたび新型コロナウイルス感染症の治療薬として白羽の矢がたった「アビガン」(物質名はファビピラビル)は、増殖プロセスの②を阻害するもので、48時間の制限もありません。また作用機序がこれまでの抗インフルエンザ薬と全く異なるため耐性の問題もありません。このため、この薬は人類を救う最後の切り札として、インフルエンザのパンデミックに備え、これまでその使用に制限がかけられてきました。今その使用制限が取り払われたのです。
このアビガン、もちろん新型コロナウイルスに効果があるかどうかについて臨床結果はありません。また催奇形性も報告されているので妊婦に対する適用はできません。しかしながら理論的には効果があるはずであり、それが救世主として期待されている所以なのです。またパンデミック対策としてすでに200万錠も備蓄されているそうです。すでにこの「アビガン」により治療が開始されたとのことですので朗報を待ちたいと思います。PCRの検査が簡単にできるようになり、「アビガン」で治療が可能となれば、新型コロナウイルスの脅威も普通のインフルエンザなみになることでしょう。
このアビガン、意外と簡単な構造をしていますが、塗料でもおなじみの水酸基やアミノ基を持ち、いかにも生物に対し活性がありそうな骨格をしています。是非ウイルスのRNA複製阻害に辣腕をふるってほしいものです。
本項の内容は下記のサイトを参考にしました。
https://kusuri-jouhou.com/training-course/influenza8.html