かんとこうブログ
2020.05.29
コロナショックの経済影響 続編 塗料需要の動向
先々週「コロナショックの経済影響」を5日間連続で掲載しましたが、今日はその続編を書きます。ご紹介する新しい情報は、日塗工が発表した「業況観測アンケート」の4月分の結果です。この日塗工の「業況観測アンケート」は月単位での市場分野別塗料需要動向がわかる日本で唯一の指標です。前年同月比%(金額)しか数値はありませんが、この数値を使って、リーマンショック時と今回のコロナショック時を比較してみることにしました。
この比較でポイントとなる点は、起点をいつにするか?です。リーマンショックの場合には起点は明らかで、リーマンブラザースが破綻した2008年9月15日です。ではコロナはどうでしょうか?最初にWHOが認知したのが、2019年12月31日でしたが、この時点では特に国内では報道もされておらず、認知度が低かったと思われます。一般的に認知され、実際の経済活動に影響が出始めたということでは、日本で初の感染者が見つかり、中国の武漢が封鎖された2020年1月になりますので、この1月を起点とすることにしました。
リーマンショック時は2008年9月を起点としてその前8か月、その後15ヶ月の各市場分野の毎月の前年同期比%(金額)を、今回は2020年1月を起点にその前8か月その後3か月の動向を下のグラフに示します。
リーマンショック時と今回の市場分野別塗料需要の月ごとの推移
現時点で、コロナからは起点から3か月までのデータしかありませんので、そのインパクトを見るには時期尚早であることはもちろんですが、今の時点でどうなっているかということを確認しておき、この先の予測の参考にしたいと思っています。
まず目につくのが自動車分野です。リーマン時と今回は大変似通った挙動に見えます。一方で、建築外装および船舶・構造物は少し動きが異なっているように見えます。今回は新型コロナウイルス感染症が拡散していく前の2019年10月-12月が、消費増税の影響によりすべての分野で前年同月比を下回っていることもあり、汎用分野での挙動に類似性が見られません。コロナの影響が本格化するのは、まだこれからと推定されるので、今後に注目していく必要があります。
さらに電機・機械・金属は、昨年10月の消費増税の影響がかなり大きく、このため現時点でのコロナの影響があるようには見えません。ただ、リーマン時には、自動車に次いで大きな影響を受けている分野ですので、この先注意してみていく必要があります。木工の場合も、木工の需要自体が長期的に低落傾向にありますので、コロナの経済影響を予測するには、やはりもう少し長めに見ていく必要があると思われます。
ということで、やはり3か月では、この先を予測するのは短すぎるようです。が、しかし、自動車分野においては同じような挙動を示しており、それが全体に反映されていきます。
このアンケートの回答は4月中旬までの状況について書かれたものと考えておりますので、4月後半からの影響は回答に反映されていません。業況観測アンケートの5月分は、緊急事態宣言が全国的に出されていた4月後半、ゴールデンウイークという要因もあり、塗料需要はさらに低迷していたのではないかと心配されます。日塗工から5月分のデータが提供され次第ご紹介することにします。