かんとこうブログ
2020.05.04
実効再生産数を計算してみました
緊急事態宣言が今月末まで延長されることが本日中にも発表されるようですが、5月1日の専門家会議の報告の中で、4月10日の時点での「実効再生産数」が全国では0.7、東京都では0.5であったことが報告され、全体として感染が減少傾向にあることのひとつの証拠として紹介されていました。この「実行再生産数」は、「ひとりの感染者が、何人の人に感染させるか?」という数字であることは、広く知られるようになりましたが、どのようにして計算されたのかは報道されていません。「実効再生産数」についてとても簡単な計算方法がネットで紹介されていましたので、その方法を使って東京都の「実効再生産数」の推移を計算してみようと思います。
この簡単な方法は、SEIRモデルに基づくと書いてありました。SEIRとは、以前ご紹介したSIRモデルに、「潜伏期間の感染者」を加えたもので、Susceptible(未感染者)、Exposed(潜伏期間の感染者)、Infectious(発症感染者)、Recovered(回復者)の頭文字をとったもので、感染の広がりを、それぞれの群の増減によって推定、解析するためのモデルです。「実行再生産数」の計算には、このうちE(潜伏期間の感染者)とI(発症感染者)を使用します。
このモデルでは、皆一様に潜伏期間が5日間、発症期間が8日間で、検査を受け陽性と判定され、直ちに入院または隔離されると仮定します。入院または隔離で他の人への感染はなくなると考えます。横軸は、t日を中心にそれ以前の12日、それ以降の13日を表す時間軸であり、横一列で同じ日に感染した感染者たちの状況の変化を示しています。左から右へ、時間の経過とともに、潜伏期間~発症期間~PCR検査での陽性確認と進みます。また、とりあえず、発症した感染者のみから感染が起きると仮定します。
そうした仮定のもと、ある日(t日)において発生する感染者は、どのような感染者から感染するかというと、t日の12日前から5日前までに感染した感染者から感染するということになります。この条件に該当する感染者の人数は、どのようにしてわかるかというと、今度はt+1日後からt+8日目までにPCR検査で陽性になった人数を合計することで計算できます。そして、t日に感染した人数は、t+13日後の陽性者の数となって現れるということになります。
もちろん、このモデルは突っ込みどころ満載で、感染者の潜伏期間や発症してから陽性と確認されるまでの期間は、人によって大きく異なる、第一、PCR検査が満足に行われていない状況で感染者の全容が把握されていない、潜伏期間でも感染は起きる 云々・・全てごもっともですが、まあ、こうして単純化すれば、とりあえず簡単に計算できるのです。
計算式は以下になります。
1/(発症から陽性確認までの日数)*R0(t)*(tの翌日から8日目までの陽性者数の合計)=(t日から13日目の陽性者数)
ここでR0(t)がt日における「実効再生産数」です。したがって、実効再生産数R0(t)は
R0(t)=(tから13日目の陽性者数)*(発症から陽性確認までの日数)/(tの翌日から8日目までの陽性者数の合計)
で求められます。発症から陽性確認までの期間は最初に8日間と規定しました。また毎日の新たな感染者数は、いろいろなところで公表されていますので、R0(t)は簡単に計算できます。計算した結果を以下に示します。
東京都の実効入生産数の推移(3月1日から4月20日)
感染期間(発症から陽性確認までの期間)と再生産日数(他の人を感染させることができた期間)を変えて3つのケースでシミュレーションしてみましたが、結果に大きな違いはありませんでした。
ケース1は、感染期間が8日間で、その期間だけ、他の人に感染させることができた場合です。横軸の期間は3月1日から4月20日までです。感染者のデータは5月3日までの数字を使用していますが、式の定義からして、現在の13日前のR0(t)までしか計算できません。
ケース2では、再生産日数(他の人を感染させることができる期間)を発症の2日前からとして、ケース1より2日多い10日とした場合、ケース3は、感染期間を8日から13日に伸ばした場合です。
いずれも、3月10-15日あたりがR0(t)のピークであり、4月に入り、値が小さくなり、R0(t)が、拡大か減少かの目安となる1を下回る日が増えていることがわかります。
ただし、5月1日の専門家委員会の数字(4月10日で0.5)とは異なる数値でした。おそらく、ここで示した方法は、単純化しすぎているためであろうと思われます。専門家の方々はもっと高度な計算をされているのでしょうが、僅か2点のみのデータ提示では、全容をイメージすることが難しいのではないかと危惧します。このように大雑把でもよいので全体像を示すことが国民の理解につながり、ひいては自粛要請の協力につながるのではないかと思う次第です。
本項を書くにあたり、以下のサイトの情報を参考にしました。