かんとこうブログ
2020.08.06
経済産業省の製造工業生産予測調査(7 月、8 月分)
ちょうど1か月前に、経産省の製造工業生産予測調査の6月、7月分をご紹介しました。今日は7月8月分をご紹介します。
前回同様、経産省の報告書の図表と説明を引用させてもらいます。
(左の表の説明)7月の生産計画については、調査結果そのままを集計すると、前月比11.3%の上昇を見込むという結果になっています。ただ、この企業の生産計画には上方バイアスが含まれています。この7月計画値に含まれるバイアスを過去の傾向に基づき補正して、7月の鉱工業生産の実績を推計試算してみると、最頻値では前月比3.1%程度の上昇、90%の確率で収まる範囲は2.1%~4.1%の間、という計算結果となっています。
(若干の補足)これも先月と同じことを書きますが、バイアスとは偏りとか思い込みを意味し、従来7月の生産計画は過大に見積もられているケースが多いため、いつも修正して発表しているとのこと。今回も集計値そのものは11.3%となりますが、過去の実績に基づき推計すると前月比では3.1%の上昇というのが最もありそうな数値であると言っています。
(右の図の説明文)仮に企業の生産計画通りの前月比で生産が行われると、7月の鉱工業生産の指数値は89.9、8月の指数値は93.0となります。一方、7月計画に含まれるバイアスを過去の傾向に基づき補正すると、7月は最頻値で前月比3.1%上昇となり、その場合の指数値は83.3となります。
仮に企業の生産計画通りに生産されても、8月の指数値93.0は、4月の指数値86.4は上回るものの、3月の指数値95.8は下回る程度の水準ですので、実際には、8月までみても、本年3月の生産水準までの回復は難しいところです。生産は当面、復調が続くことが期待されますが、感染症の拡大以前の生産水準の回復にはまだ時間を要しそうです。
(若干の補足)企業からの集計値は結構高いものになるが、過去の実績から推計した数値を使えば、7月の指数値は83.3であり依然低水準であること。さらに集計値そのものを使った指数値を8月までみても、4月は上回るが、3月には及ばないため、感染拡大前の生産水準レベルに戻るにはまだ時間がかかると述べています。次に、業種別生産計画を見てみます。
(左の表の説明文)7月の生産計画では、全体11業種のうち、10業種が前月比で上昇、1業種が低下となっています。輸送機械工業、電気・情報通信機械工業、化学工業等が上昇寄与業種として挙げられます。他方、低下寄与業種は、石油製品工業となっています。
(右の表の説明文)8月の生産計画では、全体11業種のうち9業種が前月比で上昇、2業種が低下となっています。輸送機械工業、汎用・業務用機械工業、化学工業等が上昇寄与業種となっています。他方、低下寄与業種は生産用機械工業、電気・情報通信機械工業となっています。
(若干の補足)7月の予測(計画)では、落ち込みの大きかったが故の輸送機械(自動車)の回復の目覚ましさが目を引きます。
本報告書にはないおまけをひとつ。前回(6月30日)発表と今回(7月31日)発表の7月の予測値(生産計画)の差異を見てみました。
どちらも生産計画ですので実際とは違いますが、5月中旬時点と6月中旬時点での計画の比較では、パルプ・紙・紙加工品が10%少なくなったことを除けば、概ね変更はないようで、全般に増加方向に変更されているようです。
全体のまとめとして、解説文は以下のように述べています。
「鉱工業生産は、企業の生産計画からは、7月は上昇の可能性の方が高いと考えられます。8月の生産は、7月の生産により変わりうるものの、7月との比較では上昇の可能性が高い計画となっています。ただし、最近の感染症の感染者数上昇の影響については今後注意してみていく必要があります。」
個人的には、ここまで慎重に言ってしまうとせっかく統計をとっている意味がなくなりそうな気がします。まあ、感染症拡大で状況は一変してしまうことはその通りなのですが・・
本内容は以下の経産省統計サイトから引用しています。
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/archive/kako/20200731_2.html