かんとこうブログ
2020.08.03
東京都感染者、4 月と7月の比較の続き・・「7 月は高齢者が少ないから重症者が少ない」は 正しいか?
7月30日のブログに、4月と7月の東京都の感染者数の比較を行い、7月の重症者数が少ない理由について考察を行いましたが、年代別感染者数のデータが取得できないため、これ以上の解析はできないと書きました。ところがその月別の年代別感染者数のデータが8月1日の朝日新聞に掲載されていましたので、なんとか、7月30日の続きを書くことができそうになりました。今日はそれを書きます。具体的には「7月の重症者数が少ないのは、感染者のうち高齢者が少ないから」という説明は正しいのか?ということについてです。
8月1日に朝日新聞に掲載されたデータは以下のようなグラフを含む記事でした。(図がみにくくてすみません)
残念ながら年代別の具体的な人数がすべて書かれてはいなかったのですが、記事の記述とグラフの棒の高さの測定から感染者数を計算してみました。その数字を使って、4月と7月の年代別感染者数のグラフ化してみました。
次に年代別重症者化率のデータを探したのですが、残念ながらそのものずばりのデータが見つかりませんでしたので、代わりに年代別死亡率と年代別入院者比率のデータを使って計算してみることにしました。(アメリカのCDCによる感染者中の集中治療室確率のデータがありましたが、下表の中国における入院率よりも高い数字であり、アジア人との差が大きすぎると判断し採用しませんでした)
死亡率は厚生労働省の資料からですが、これは4月までの感染者約1万人についての数字です。一方、入院者率はDiamond on lineからの情報で、イギリスのインペリアル・ロンドン・カレッジが中国における44000人のデータから、軽症者を除く入院感染者の割合を示したものです。重症者の数字ではなく、中等症者と重症者の数字です。朝日新聞のデータでは、60代以上が区別されていませんので、しかたなく、シミュレーションには代表として70台のデータを使うことにしました。シミュレーションの結果を上の表と下の図に示しています。
右のグラフは中等症以上の入院者数のシミュレーション結果で、年代別感染者数に呼応した入院者数になっており、20代、30代では7月が多く、60代以上では4月が多い結果となりました。全体としては4月が281人、7月が246人と7月の方がやや少ない結果でした。
以上がシミュレーションの結果ですが、この結果と現状を比べてみるとどんなことが言えるでしょうか?
この図は7月30日に掲載したものと同じです。その後重症者数は減って現在15-6名になているはずです。どうでしょう。やはり7月は感染者数にくらべて重症者数が圧倒的にすくないと思いませんか?
ニュース等の解説では、「4月は具合が悪くなってから感染が見つかるケースがほとんどで、感染が見つかってから重症化するまでの日数が短かったが、7月は無症状または軽症の段階で見つかっているので重症化するまで時間がかかるため、これから増加してくる」などと説明されています。でも本当にそうなのでしょうか?感染者の増加が顕在化したのは、6月20日以降であり、すでに1月半程度経過しています。毎日の新規感染者が100人を超えるようになった7月の初旬から数えても1月経過しました。上の説明だけで4月と7月の重症者数の大きな差が説明しきれているとは思えません。
高齢感染者数の割合が低いこと以外にも、重症者数が少ない原因になりうるものがいくつかあると7月30日に書きました。感染者の症状をコントロールする技術が向上している、ウイルスの変異により感染力が強く重症化しにくくなっている、など検証に価する仮設足りうるものが挙げられます。
マスコミならびに開設する感染症の専門家の方々には、現在起こっていることに対し定性的な話だけではなく定量的検証を伴った説明を期待したいものです。本来は、政府や自治体に期待すべきことかもしれませんが・・
本項作成にあたり、朝日新聞8月1日付紙面および以下のサイトよりデータを引用しました。
https://www.cb-m.co.jp/wp-content/uploads/ff6ab826cb2df5ab10d70c05ea44922c.pdf