かんとこうブログ
2020.10.29
世界の TOP3 の第3四半期決算にみる海外の塗料需要動向
調査統計の発表は月末と月初が多く、今頃が一番ブログの題材に困る時期です。調べてみたら、世界のTOP3塗料メーカーはすでに2020年の第3四半期の決算を発表していましたので、今日はその内容をご紹介します。ただし、ポイントは個々の会社の決算内容ではなく、あくまで世界の需要動向の指標として見ていきたいと思います。情報源は、TOP3各社のホームページに掲載されている第3四半期の決算報告書です。
世界の需要動向を示す資料から紹介します。
地域的にみるとそれぞれの地域での感染傾向が反映されています。右のグラフのオレンジ色の線はアジア・パシフィックを示していますが、これは中国を含んでいます。一方ではこれと別に点線で中国が示されています。このアジア・パシフィックが他の地域と谷底の位置がずれているのは中国の影響です。中国の谷底は他の地域よりも早い2月であり、他の地域が谷底にあった4月にはほぼ需要が回復していました。
もうひとつ他と異なっているのは南米です。これは南半球であることの影響と思われます。南米は他の地域よりも回復が遅れ気味ですが、これはこれまで冬を越してきており、コロナ禍の影響をより強く受けていたと思われるからです。
PPGはさらに各地域について分野別の需要動向(数量の前年比)を示しています。上の表を要約すれば、分野的に影響をうけなかったのが建築と包装用であり、地域的にはアジアパシフィック(とりわけ中国)であるということになります。この表には記入していませんが、オリジナルには今後の需要見通しも記載がり、それによればかなりの分野で10月以降の回復が期待できるとしています。
次にAkzo-Nobelの需要推移を示します。
Akzo-Nobelはその売り上げの7割がEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)であり、中でもヨーロッパが中心です。ここでPaintsは建築用、Coatingsはそれ以外を指しています。建築の回復は早く、5月にはすでに前年並みに回復、それ以外も9月にはほぼ前年並みに回復しています。
TOP3の一角Sherwin Williamsはこうしたデータを発表していませんが、御存知のように、もともとアメリカ一辺倒だった会社ですから、同社の建築用を見ればアメリカの需要動向は想像できます。ということで、各社の決算状況を見ることにします。3社の決算内容を下に示しますが、利益の定義がそれぞれ異なっており通貨も€と$がありますので、単純な比較はできませんのでご了承ください。ポイントは、各分野での売り上げと利益の前年比、さらには第3Qと1-3Qの関係です。
Sherwin Williamsは、機能性(同社の場合は旧Valsperの工業用塗料が主体)を除き、アメリカ(建築塗料自社販売店経由)でも消費者(建築塗料DIYストア経由)でもすべて前年同期比を上回っています。PPGも建築用塗料については、自社ストアはよくなかったが、DIY経由は好調だったとしていますので、アメリカの建築需要は決して悪くなかったと思われます。意外に巣ごもり需要が発生していたのかもしれません。
しかし、この3社の決算内容を見て一番驚いたのは、各社ともしっかり利益率を増大させていることです。各社・各分野別の第3Qおよび1-3Qでの利益率について前年と比べた図を示します。
以上がご紹介の内容です。要約するとTOP3の決算内容からみた2020年の世界の塗料需要動向は
①需要は4月が谷底で、そこから順調に回復し9月ではほぼ前年並みに戻った。ただし中国は、2月が谷底で4月にはほぼ回復しており、南米は回復が他の地域より遅れている。(その他南半球は不明)
②分野別にみると、建築他BtoCは工業用などBtoBに比べて落ち込みは少なく利益率もしっかり確保できている。
③TOP3すべてが、前年同期にくらべて利益率を増加させている。
ということになろうかと思います。これはあくまで世界のTOP3の決算内容からの結論ですから、これがそのまますべて世界需要の指標であるとは言えないとは思いますが、今日ご紹介した内容に比べると、日本は全体的に回復が遅れているように感じます。特に建築用がなかなか回復してこないことが気になります。今後とも注意してみていきたいと思っています。