かんとこうブログ
2020.10.12
コロナ禍で再生可能エネルギー比率高まる・・日本の発電事情
9月25日の朝日新聞の1面では、「2020年1-6月の日本の電源における再生エネルギーの比率が23.1%と2019年の18.6%から大幅に増加し、政府目標に迫った」と報じていました。この背景には、新型コロナの感染で電力需要が低迷し、燃料費の高い天然ガスや石油の使用が抑制されたりしたため、相対的に太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーの比率が高まったと解説されていました。2030年度の目標値が22-24%ですので、一時的とは言えこのままいけば目標達成となるわけです。
それはそれで良いことではあるのですが、この再生可能エネルギーについて世界は一体どうなっているのか、気になったので調べてみました。データソースはIEA(International Energy Agency)で、電力に関する詳細データの閲覧、ダウンロードができます。対象国はOECD加盟国プラスアルファの計43か国でアルファには中国、インドなどが入っていますがロシアは入っていません。それでは1-6月の各国の総発電量を見てみましょう。
次に問題の再生可能エネルギー比率です。再生可能エネルギーとは、発電の手段として、水力、火力、太陽光、風力、地熱などを使用するものであり、火力であっても再生可能な材料例えば木材などは再生可能エネルギーになります。ちなみ再生可能エネルギーにならないものは、主には火力のうちの石炭、石油、ガスと原子力です。
右上の図は、日本と韓国です。これも一見似ているようですが相違点もあります。火力部分は石炭とガスがほぼ二分している点は同じですが、日本には水力と太陽光がかなりの量あるのに対し、韓国には水力と太陽光はほとんどない点が違います。
左下図は、再生可能エネルギー比率の高い上位3か国です。共通点はいずれも水力発電の比率が高いことです。国土の地理と気候が水力発電に適していることがこれらの国の再生可能発電に寄与しています。再生エネルギー比率100%のアイスランドでは、水力に加えて地熱発電も大きな比率を占めています。
右下図は、ヨーロッパの発電大国フランスとドイツで、両国とも周辺諸国へ電力を輸出していますが内訳はかなり違います。フランスは有名な原子力発電大国で現在でも過半数を原子力発電に依存しています。一方のドイツはすでに脱原発を決めて再生可能エネルギーへの転換を図っており、太陽光や風力の割合が増加しています。この他オーストラリアは、自国で豊富に産出する石炭を使った発電が多いため、再生比率が高くありません。このように発電には、それぞれの国の事情があるようです。
それでは最後に、一人あたりの電力消費量を見てみましょう。このIEAのデータにはヨーロッパにおける電力の輸出入量のデータもありました(下図)のでそれを使って発電量から輸出入量を加減して消費量を計算し、一人あたりの数値を求めました。あくまで大雑把な数値ですが、結構面白いデータが得られました。
1人あたりの消費電力で見ると日本はベルギーとフランスの間に位置しています。アメリカは日本よりもかなり多く、中国も予想よりはずっと多い量でした。ダントツの最下位はインドでしたが、それでも総発電量が第3位であったということは人口の影響の大きさを示しています。一人あたり消費電力量にはいろいろな要因が考えられます。発電能力、気候、電気製品の普及度合、住居スペースの広さなどですが、寒い国では電力消費も多くなるというのは傾向としてありそうです。
最後は話がそれてしまいましたが、IEAの報告書をもとに世界各国の比較をしてみました。マスメディアではここまで詳しい情報は紹介されていないように思います。再生可能エネルギー割合とCO2排出量とは直接結びつきませんが、これを書いていて小泉環境大臣が国連で石炭火力について詰問された背景が少しわかったような気がしました。
Data Source