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かんとこうブログ

2020.12.16

法人企業景気予測調査(令和2年 10~12 月期調査)は何を語るのか?

210日に財務省から、掲題の調査結果が発表されました。この調査は、四半期毎に全国の14000社ほどの会社に調査票を送り、11000社を超える会社から得た回答を集計しているもので、経営者が自社および国内の景況をどのように見ているかを示す指標として有用なものと考えられます。今回調査は、11月15日を調査時点として、10-12月(当期)および来年1-3月(次期)、4-6月(次次期)の景況を「上昇」、「不変」、「下降」、「不明」の四択で回答したものを集計しています。

報道された主な内容は、「大企業の景況感二期連続プラス」というような内容だったかと思います。しかし、この調査結果には、大企業以外の中規模企業、中小企業の景況感や業種別の景況判断が掲載されていますので、時系列データとともにご紹介したいと思います。データはすべて内閣府ホームページ「法人企業景気予測調査」から引用してグラフ化しています。
https://www.mof.go.jp/pri/reference/bos/results/data.htm 

まず、前回911日の調査結果と今回の1210日の調査結果を対比してご覧ください。

ここでの比較はあくまで中小企業の全産業です。実は今回「大企業は二期連続プラス」と報じられていますが、中小企業では全く別な話なのです。中小企業においては、前回調査でも今回調査でもBSI(上昇-下降の数値)はマイナスです。910月と比較的順調な回復が見られたため、中小企業の当期(1012月)のBSI-15.6とかなり回復しています。しかしながら、先行きはというと前回調査をほとんど変わりありません。この調査が行われた1115日時点は、各地で感染拡大が報じられてきたころでもあり、経営者の不安を払拭するには至らなかったものと思われます。現時点で同じアンケートをとれば、さらに悲観的な数値になったであろうことは確実です。

先ほど少し触れましたが、BSIデータは業種や企業規模でかなり変わります。この調査結果には、2004年以降のBSIデータが添付されており、リーマンショックの時期も含まれていますので、当時と比較できるのでBSIの推移について調べてみました。

自社の景気判断は、繰り返し書いていますように、大企業と中小企業では大きく異なっています。今回は2006年からデータをプロットしていますが、中小企業の製造業でBSIがプラスになったのはこの期間内で2回しかありません。グラフ右端の赤線の部分は当期(10‐12)に該当する部分で両者とも大幅に改善しています。しかしすでに第3波が来襲し医療崩壊が懸念されている中で、次期以降はふたたび不透明感を増したのではないでしょうか?

次に今回のコロナ禍とリーマンショックにおけるBSIの推移を並べて比較してみます。これは、様々な統計において比較を行った結果、類似性があると判断しています。3か月ごとの統計なので、基点(事件の起こった時点)を合わせるのが難しいのですが、コロナ禍は201910-12月、リーマンショックは20087-9月に設定しました。

いかがでしょうか?大企業、中小企業ともBSIの推移はコロナ/リーマンはよく似ているように見えます。ただし、今後の動向はあくまで感染症の拡大を阻止できるかどうかにかかっているのは間違いありません。

この業種別指数は企業規模別で集計されていますが、中小企業の数値をグラフ化しました。上段が製造業、下段が非製造業です。当期(10-12月)における中小企業全産業のBSI▲15.5ですので、この数値以下の業種が、より大きな影響を受けていると考えられます。

当期比較的好況であった業種は、製造業では、木材、石油・石炭、窯業・土石、自動車などが、非製造業では農林水産業が挙げられます。また比較的不況であったのは、製造業では電気機械、非製造業では、建設、情報・通信、卸売りでした。次期(1-3月)については、当期よりも落ち込むと予測している業種がかなりあります。木材、石油・石炭、窯業・土石、金属製品、自動車、運輸・郵便など、当期比較的好況だった業種が時期の停滞を予測しています。

別な意味での注目は非製造業の宿泊・飲食サービス業です。4-6月の壊滅的な落ち込みが、7月以降急激な回復を見せています。Go Toキャンペーンの効果でしょうか?正直言って複雑な気持ちです。

この調査は、日本の多くの経営者が、この先の景況感をどう感じているかを表す貴重な調査であり、今後とも注視してご紹介していきたいと思います。

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