かんとこうブログ
2021.02.09
ファインバブルをご存知でしょうか?
昨日オゾン水を使用した手洗い装置のご紹介をしました。実はこのオゾン水と並んで気になっていた装置があります。テレビのコマーシャルでよく見る「石鹸などを使用せず細かな泡だけで、顔や体の汚れが落とせる」というシャワーノズルです。調べてみると、こうした細かな泡を利用した装置というのは、驚くほどたくさん商品が販売されていました。ただ、その原理や効能について、個々の会社のサイトでは丁寧な説明がなされているところが見つかりませんでした。
探しているうちに、「一般社団法人 ファインバブル産業会」(以下のURL)という組織が大変わかりやすい説明を載せていることがわかりました。今日はこの「ファインバブル」についてご紹介します。昨日のオゾン水とも少し関係があるようです。
https://fbia.or.jp/fine-bubble/
まずファインバブルの定義ですが、下図をご覧ください。
今日のファインバブルの説明は、基本的に上記ファインバブル産業会のサイトから引用しています。
ファインバブルには2種類があり、「マイクロバブル」はとても小さく1~100ミクロン(10のマイナス6乗メートル=1mmの1000分の1)、「ウルトラファインバブル」はさらに小さく1ミクロン未満の大きさで、それぞれの大きさに由来する特徴をもっています。「マイクロバブル」が多数入った水は白濁しています。「マイクロバブル」は非常にゆっくりと水中を浮上し、溶解がすすむと収縮して消滅します。 方や「ウルトラファインバブル」が多数入った水は透明です。「ウルトラファインバブル」はもはや水中では浮上せず、刺激を与えなければほとんど溶解も浮上もしないので、数週間~数カ月の寿命があると報告されています。
「マイクロバブル」の作り方は主に3種類あり、液せん断による気泡の破壊(高速で水と気体を混ぜる)、液中溶存ガスの析出(水にとけている気体を析出させる)、蒸気の急凝縮(蒸気を急激に凝縮させる)によって作ります。一方「ウルトラファインバブル」の作り方は、一旦マイクロバブルを作りそれを原料としてさらに気泡を細かくする方法と、直接に超音波キャビテーション(渦)などの特殊な装置で作る方法の2種類があります。
この「ファインバブル」ですが、さまざまな効能がありますので、順番に説明していきます。
その前に寄り道をします。先ほど「ウルトラファインバブル」は目に見えないと書きましたが、目に見えないとはたして「ウルトラファインバブル」が存在しているかどうかわかりません。そこで、「ウルトラファインバブル」の検出にはレーザー光線が使われています。(上の左の図)
効能の一番手は、「界面活性作用」です。この作用は、水中で気泡表面がマイナスに帯電したり(表面帯電)、それにより帯電した物質を引き寄せたり(表面吸着)反発したり(表面反発)すること、また水中に存在する油性のものを集めてきたり(疎水性相互作用)します。テレビのコマーシャルで出てくるのは、この疎水性相互作用による効果が多いようです。これらの作用は、マイクロバブルとウルトラファインバブルの両方に共通のものです。(上の図に真ん中)
効能の二番手は、衝撃作用です。この作用はマイクロバブルのみの作用ですが、気泡が壊れる際に発生する衝撃波は、周囲に大きな圧力変化を及ぼします。この変化は洗浄作業に大きな役割を果たすものと考えられます。(上の図の右)
効能の三番手は、酸化促進作用です。これもマイクロバブルのみの作用です。昨日ブログでご紹介したオゾンは、水に難溶ですが、細かい気泡にしてやることで溶解速度を上げることができ、溶解したオゾンは強力な殺菌作用を示します。(上の図の左)
効能の四番手は、生物活性作用です。これはウルトラファインバブルのみの作用です。ウルトラファインバブルは、長期にわたり安定に存在することができます。ウルトラファインバブルは植物の根から吸収されやすく、ウルトラファインバブルに含まれる酸素により、植物中の酸素濃度が維持され、生理活性が高まります。(上の図の真ん中)
このほかにも上の図の右側に示したような効能がありますが、基本的には気泡の微細さ(それによる表面積の巨大化)に起因する界面の大きさによる効能と考えてよいと思います。
こうした効能を活かしてさまざまな用途が提唱されており、またSDGsにも貢献できると紹介されています。
ところで、このファインバブルを塗料に応用したらどうなるのでしょうか?現在、水性塗料では夏季の腐敗防止のため、殺菌剤を添加しているケースがあるのではないかと思いますが、このファインバブルによって殺菌剤が不要になったりしないかなどと想像しています。
また、その他の用途に船舶というのがありますが、これは三井造船が提唱している船体抵抗低減システムです。細かな気泡を発生させることで、船体と海水との摩擦抵抗を低減するというユニークなアイデアです。このように、ファインバブルで思いもよらない塗料ができたらいいなと思いつつご紹介しました。