かんとこうブログ
2021.02.26
プルシアンブルーの話 その3 顔料から機能性材料へ
さて昨日は、「プルシアンブルーは濃青色の錯体であり、化学名はヘキサシアニド鉄(II)酸鉄(III)である」と書色ところで終わりました。今日はその続きです。今日の内容はほとんどを関東化学株式会社 技術一開発本部 中央研究所 第三研究室 室長 吉野和典さんの書かれた「プルシアンブルー;新しい応用とそのナノ粒子」から引用させていただきます。斜体字部分は引用です。
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/backno7_pdf67.pdf
プルシアンブルーの組成・構造について
「一般的に化学式はFe4[Fe(CN)6]3で示されるが、実際には次の二種類の化合物の総称である。一つは、「不溶性」タイプと呼ばれFe3+4[Fe2+(CN)6]3・xH2O(x=14~16) で示される。このタイプは凝集した粒子であり水や溶媒中で沈降する。
もう一つは「可溶性」タイプでM+Fe3+[Fe2(CN)6]・yH2O(M+:K+,NH4+など、y=1~5)で示される。水に加えると微細粒子が分散して青色の液体となる。これは、ろ過してもろ紙に何も残らないほか、長時開静置しても何も沈降しない。つまり、溶液と同様の挙動を示すため「可溶性」と呼ばれている。M+の種類により、カリ紺青、アンモニウム紺青などと区別されることもある。
なお、プルシアンブルーはCN-を含むため土壌汚染対策法の特定有害物質であり、水質汚濁防止法の総シアンとして検出される。このため、廃棄には適切な対応が必要である。しかし、プルシアンブルー自体に毒性はなく、毒物及び劇物取締法でも「有毒な無機シアン化合物」から除外されている。」と説明されています。
https://www.you-iggy.com/chemical-substances/iron-iii-hexacyanidoferrate-ii/
鉄イオンが2価から3価へ、逆に3価から2価へと変化することで色が変化し、この原理が長年にわたり建築物の設計図などで青写真として利用されてきました。
鉄イオンは紫外線に当たると容易に3価から2価に還元されます。
また、エレクトロクロミック現象とは、電子状態が変わると色が変わる現象を意味します。
さて先ほど混合電子化状態という難しい言葉がでてきましたが、これが機能性材料として期待されている理由の一つなのです。混合原子価というのは、「異なる原子価を持つ同種の元素を含む化合物である。わかりやすい例が四酸化三鉄(Fe3O4 = Fe2+O・Fe3+2O3)であり、プルシアンブルーも2種類の原子価の鉄(Fe2+とFe3+)を含んでいる。」ということです。そしてこのように「複数の酸化還元状態を取ることは、過酸化水素やグルコースなどのセンサーへの応用が研究されている。」のです。つまり酸化・還元によって原子価が変化して色がかわるので酸化・還元物質のセンサーになりうるということです。
次に機能性材料として期待されているもう一つの理由をお話しします。それはフレームワーク構造と呼ばれているものです。難しい説明は省略しますが一言でいうとジャングルジムのような大きな空間をたくさんもった構造をしているということです。
「大きな空隙はさまざまなカチオンや分子を脱挿入できる。カチオンの脱挿入はイオン交換体として機能する。フレームワーク構造は強固で安定であり、吸脱着による構造変化はわずかである。このため、吸脱着を繰り返しても性能が劣化しにくい。また、脱挿入できるカチオンや分子は空隙の大きさに依存するため、選択性が高いことも特徴である。」
この空隙は丈夫で変形しにくいので、さまざまなものを出し入れすることが可能だということです。
最後にプルシアンブルーが期待されている機能性材料としての用途の一覧表を示します。このほかにはナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池の正極材として開発が進められているそうです。