かんとこうブログ
2021.05.10
ファイザー社ワクチンの化学組成
多くの自治体で高齢者向けワクチン接種が始まっていますが、アメリカではワクチン接種の普及スピードが低下傾向にあり、その理由としてワクチン接種を望まない人たちの存在が挙げられます。思想信条や宗教的な理由によって希望しないなど理由はさまざまでしょうが、化学者の端くれとしてはワクチンの化学組成が気にならないと言えばうそになります。今日はファイザー社製にワクチンの化学的な組成についてご紹介します。
どんなものが含まれているかは厚生労働省のホームページに記載があります。それぞれの含有量まではわかりませんが、含まれている物質はすべて書いてありました。以下の物質です。
このうち有効成分は、新型コロナウイルスの突起部分にあたるスパイクタンパクの全長体、すなわち1273のアミノ酸からなるたんぱく質のすべてのアミノ酸配列を規定しているmRNAです。大事な点は、この有効成分には人の細胞にとりつくスパイク部分の情報だけしか含まれておらず、コロナウイルス感染症を引き起こす病原性部分は含んでいないということです。ですから、ワクチンを打ってコロナにかかるということはあり得ません。
このワクチンの作用機序としては「本剤を接種し、mRNAがヒトの細胞内に取り込まれると、このmRNAを基に細胞内でウイルスのスパイクタンパク質が産生され、スパイクタンパク質に対する中和抗体産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで、SARS-CoV-2による感染症の予防ができると考えられています。」と説明されています。すなわち、ワクチンに含まれているスパイクタンパクのmRNAが、細胞に取り込まれ、スパイクタンパクを増産して体内に放出すると、免疫システムが作用して抗体が形成され、本物のウイルスが侵入してきたときには、抗体が働いて撃退することができるということです。
添加物として、さまざまなものが含まれていますが、大別して2種類です。紫字で書いたものが、人間の体内に入ってからスムースに細胞に取り込まれるように添加されているもので、青字で書いたものが、いわゆる輸液、大量の人工物を体内に注入する場合に用いられる媒体であり、生理食塩水やリンゲル液の成分と言った方がイメージしやすいと思います。
紫字の添加物のうちALCの番号のついたものはこれまでのワクチンでは使用されたことがありません。このワクチンのために開発されたものであり、組成中で特許性の高い部分はここになります。その化学構造を以下に示します。
ALC-0315については、「他の脂質と一緒に使用して脂質ナノ粒子(LnPs)を形成することができる生理学的pHカチオン性合成脂質である。 これらのナノ粒子は、インビトロとインビボの両方のオリゴヌクレオチドまたはメッセンジャーRNAなどの治療上有効な核酸の取り込みを促進する。」と説明されています。すなわちこのコロナのワクチン用に開発され、ALC-0159とともに脂質のナノ粒子を形成し、細胞に取り込まれやすくするために添加されているのです。スパイクタンパクのような大きな物質は直接細胞膜を透過して細胞に取り込まれることはありません。大きな物質を取り込まれるときは細胞膜が陥没し、その物質をくるむように細胞膜で覆って細胞の中へ取り込みます。この過程をエンドサイトーシスと言い、この過程をスムースに行わせるため、上図の物質が添加されているようです。ALC以外の物質、DSPCとコレステロールもこの過程を助けるために添加されていますが、もともと細胞膜に存在する物質です。
青字の成分については、食塩をはじめとする塩と糖分になります。輸液製剤は大きく3つに分類され、
①電解質だけで血漿浸透圧とほぼ等しい値に調節したもの
②ブドウ糖だけで血漿浸透圧とほぼ等しい値に調節したもの
③電解質とブドウ糖を合わせて血漿浸透圧とほぼ等しい値に調節したもの
となるそうです。この場合、電解質と糖の両方が含まれているので、③になるのでしょうか?いずれにしても使用実績の多いものばかりで安全性についての不安要素はないように思えます。
医学的知識を十分に持ち合わせていない人間が、ワクチンの安全性に言及することは問題があるのかもしれませんが、厚生労働省のサイトをみても、今日ここでご紹介したようなことは書かれておらず、紋切り型の説明で終わっているように感じましたので、自分なりの理解をご紹介しました。多少なりとも参考になれば幸いです。