かんとこうブログ
2021.05.18
朗報!ワクチンが変異種にも”効果てきめん”が確認
5月12日に横浜市立大学から、同学の山中竹春教授らの研究により、医療従事者を対象にワクチンを2回接種した100人余りについて分析したところ、およそ9割の人は変異株に対して効果が期待できる抗体が体内に作られていたという研究結果をまとめたという発表がありました。横浜市立大学が発表した内容は以下に要約されています。
これを読んで、まちがいなく変異種に対しても中和抗体ができていることはわかりましたが、どの変異種についてどうだったのかという詳しい情報がありませんでした。そこで、辿っていくと実際に投稿されて論文がダウンロードできましたので、もう少し詳しい内容をご紹介します。
試験結果の概要は、下のグラフに要約されています。
上の段が、ワクチン接種までに未感染であったグループ105名、下の段がワクチン接種前にすでに感染していたグループ6例です。一つ一つの小さな〇が1個のデータを表しており、縦軸は中和抗体の量で抗体の生成の判断基準は40を上回るかどうかになっています。左の図が接種前、真ん中の図が1回接種後、右が2回接種後です。色の違いは従来型(欧州型)と7種類の変異種を示しています。グラフの上部の赤い数字が、被験者のうちで抗体が生成した被験者数です。
未感染者のグループでは、ワクチン接種前には全く中和抗体が生成されていませんでしたが、1回目接種後から中和抗体の生成が進み、従来型とニューヨーク型の変異種には50%以上の人に中和抗体が生成してしました。2回目接種後では、南アフリカ種の中和抗体生成率が89.5%にとどまったものの、あとはインド型を含むすべての変異種に対し90%以上の人が中和抗体を生成していました。既感染者の場合は、もっとワクチンの効果が顕著であり、1回目接種で100%の人に中和抗体が生成していました。下に各変異ウイルスのタイプと中和抗体生成率の一覧表を示します。
と、ここで気になるのはどうやって調べたかということです。実はこの山中竹春教授らは、実に革新的な方法でこうした中和抗体の検査を行っており、わずか3時間で検査が完了します。昨年7月に同学から発表されて内容の要点を以下に示します。
この方法の特徴は何といっても実際の病原性ウイルスを使用しないことで、その代わりにスパイクタンパクとHiBiT標識を組みわせたウイルス様微粒子を使用します。HiBiT標識とは、目的とするタンパク質を発光させて検出するための物質です。外側のスパイクタンパクが、実際のコロナウイルスと同じように、ヒト細胞のACE2受容体に結合して細胞内に取り込まれたあと、抗体が存在している場合にはHiBiT部と抗体のLgBiTとが結合し発光することで抗体を検出できるという仕組みのようです。
いずれにせよ、日本人を対象にした検査で変異種に対するワクチンの効果が実証された意義は大きいと思います。もちろん、抗体の持続性は気になるところではありますが、おおざっぱに言えば、ファイザーのワクチンについては、6か月までは少なくとも持続性は確認されているわけで、最大の懸念であった変異種にはワクチンの効果がないのではという懸念がかなり払拭できたことは素晴らしい朗報ではないかと思います。