かんとこうブログ
2021.07.02
「非製造業5期ぶりプラス」は「苦境底打ちの兆し」か?・・日銀短観
7月1日に日銀短観6月調査分が発表になりました。今朝の朝日新聞の見出しは、上に掲げた「 」内の文字が並んでいましたが、そんなに楽観的なのかよく理解できません。この日銀短観は全国9000以上の企業から現在と先行きの景況感について調査しているもので、このあとご紹介するように各業種別の動向も把握できるきわめて重要な経済指標と考えています。まずは、規模別、製造業/非製造業別のこの3年半の推移をご覧ください。
赤枠で囲った部分が今回の調査分です。企業規模の影響が大きいのは相変わらずですが、大まかにみれば、2020年の6月9月に4大幅に落ち込んでいた製造業が、大企業を中心に回復してきていることは間違いのないところだと思います。しかしながら、グラフ右端の9月(予想値)は必ずしも上向きではありません。どうひいき目に見ても横ばいか微減であろうと思います。果たして見出し通りに、底打ちの兆しは経営者に見えているのか、見えるとすればワクチン接種への期待感以外には希望はないように思えます。そのワクチンも配送能力不足ではなく、供給ができなくて中断しているようですが・・
それはさておき、日銀短観で示された各業種別のDIの推移を見てみましょう。データはすべて中小企業のもので、塗料と比較的関係のありそうなものを選択して載せています。赤線がリーマンショック時、濃青線が今回のコロナ禍です。濃青線の右端は予想値なので色を変えてあります。製造業から示します。
製造業ではいわゆるV字型を示している業種も多く、グラフの左端の始点である2019年7月時点のレベルにDIが戻っている業種がかなりあります。製造業全体、化学、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、電気機械、自動車などが該当します。全般にリーマンショック時に比べ、DIが落ち込んだ谷の深さは浅いのですが、唯一例外は造船・重機等で、明らかにリーマンショック時よりも、DIの数値が下回り続けています。
これに比べると、非製造業は業種間の差がもっと激しく、コロナ禍でも好調を維持した通信がある一方で、緊急事態宣言等で時間営業や休業の影響を受けた宿泊、飲食、運輸などはいまだにDI値は低迷しています。推移の形はV字型に見える業種もありますが、まだ6月時点でもマイナスであり果たして底を打ったという感じであるのか、気になるところです。大企業のDIならば違うのかもしれませんが、少なくとも中小企業の非製造業のDI値を見る限り、底を打ったという期待はもてないのではないかと思います。その証拠に9月の予想値は宿泊・飲食を除き下向きになっています。
全体をまとめると、中小企業のDIを見る限り、製造業はV 字回復でコロナ前のDIに戻った業種が多いが、非製造業は全般にDIが低く、まだコロナ前に戻らない業種が多いということになるのではないでしょうか?
この日銀短観を見ていて少し気になることがあります。それはこのDI値が果たして実際の生産数量、あるいは出荷金額と一致するのかということです。個々の回答の基準が、平年値なのか、前年同月比なのか、前月比なのかということです。例をあげれば自動車は、日銀短観のDIを見る限り典型的なV字回復を示しています。しかし、先日ご紹介したように、5月は半導体不足の影響もあり、生産台数は昨年のコロナはさすがに上回りましたが、一昨年からみれば非常に低い水準でした。この傾向が6月に一挙に改善されるとは思えません。この答えはあと3か月待って検証したいと思います。