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かんとこうブログ

2021.07.27

Coatings world社のTop Companies Reportがまだ発表されません

業界関係者では御存知の方が多いのですが、毎年この時期Coatings World 社が世界の塗料製造業社のランキングを発表しています。対象となる会社は年間の売り上げが1億US$以上の会社で、毎年80社前後がノミネートされます。世界の大企業の動向など関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうでもないのです。このところずっとM&Aが常態化しており、常連企業の名前が消えたり、突如ベスト20に名前が出てくる会社があったりします。これらはほとんどM&Aであり、おおざっぱな表現を許容してもらえれば、世界のトップ企業は巨大化を続けているのです。巨大化を続けるにはそれなりの理由がありますが、単に売上高のみを競うといった昭和の日本企業のようなことではなく、将来を見据えた深慮遠謀が潜んでいるように思われます。大げさに言えば、トップ企業の動向は彼らの戦略の影絵なのです。影絵から各社の意図を感じ取れることもあるのではないかと思っています。

このランキングは、正直言って正確さ、信頼性は今一つです。にもかかわらず、私がこのランキングを心待ちにするのは、これが無料で入手できるほとんど唯一の世界ランキングだからです。 

今年はもう7月27日になりました。昨年は例年より遅くて7月9日でした。例年は7月の第1週に発表されていましたので、昨年でも遅いのですが、今年はひょっとしたら発表しないかもしれないと思うほど遅れています。実はこのランキングは1997年から続いているのですが、2008年のランキングだけは上位20社のみしか発表されませんでした。一切説明がありませんので、どういう事情がわかりませんが、かつてはそんなことがありました。そんな風にならないことを祈ります。

今回の対象となる2020年は、COVID-19 Pandemicによる異常な一年でした。トップ3については途中までフォローしていましたが、売上は減っても利益は確保するといった堅実な状況であったと記憶しています。ただ、全般に売上金額自体は減少しているはずです。

昨年は、こうした「ランキングがまだです」という内容を掲載したら、翌々実に掲載されました。今年もそうなるといいなと思いつつ書いてみました。以下参考までに、2019年のランキング(Top Companies Report)の解析の第1回目を再掲します。

Coatings World Top Companies Report 2020 詳報  その1 20207 177の再掲です。

速報で書いたように、今年のレポートは 2019 年度の売上ランキングであり、全体として大きな動きはありませんでした。まず抑えておきたいのが 1 億ドル以上の売上を記録した会社数です。世界の塗料需要の推移のグラフとともにご覧ください。

ランクインした会社数は、この 9 年間でみれば、緩やかな減少傾向にあり、毎年約 0.5 社減少しています。左の図は、世界の塗料に関する総需要の実績(2015 年まで)と予測(2020 年まで)です。(Global Paint and coatings Industries Market Analysis (2015-2020) より引用)この間およそ年率 5%で成するとしてます。これが正しいとすれば、ランク入り企業数は増加傾向にあってもよいと思われますが、ランクイン企業が増加しないということは、ラン
クイン企業においても、M&A が盛んにおこなわれていることの証左と考えれば理解できる現象ではないでしょうか?この点を別の角度から見てみることにします。

左図は、1-3位の合計、1-10位の合計、1-20位の合計、1-30位の合計の推移を示していますが、いずれも順調に売り上げを伸ばしているように見えます。しかし、上位30社のどの階層が売上げを伸ばしているかを見た右の図では、大変興味深いことに、11-20位の売上合計は、増加ではなく減少しており、21-30位も停滞していることがわかります。左の図で示された全般的な増加傾向は、110位の上位メーカーに牽引されたものであることが理解されると思います。またこの11-20位の売上合計の減少も、企業買収によるものと推定されます。4-10位の売上合計も1-3位の売上合計を上回る勢いで増加しており、巨大化傾向がトップ10全体で起きていることを示しています。

似たような見方ではありますが、今度は各ランキング順位の会社の推移を見てみます。各年のランキングの1位、10位、20位、30位にランクされた会社の売上推移を下にしめしています。10位、20位の売上金額は不規則に推移しており、ここでも企業買収の影響が見て取れます。10位の売上金額が2017年度以降下落したのは、ValsperSherwin Williamsに買収された影響と見て間違いないと思われます。20位の会社の売上金額もむしろ低下傾向となっています。

左の図は、冒頭で示した世界需要の実績と予測です。これをもとに上位1-3位、1-10位、1-20位、1-30位の市場占有率を計算したのが下の図です。先ほど見たように、上位30社の平均増加率は年率5%に及ばないため、上位30社の全市場占有率は、年とともに減少すると算出されてしまいます。1990年代後半から2000年代にかけての市場の寡占化傾向はひとまず一段落したことになりますが、これはひとえに新興国市場を中心とした活発な需要増がもたらしたものとも言えます。1-10位の10社の占有率は、低下したとは言えまだ39%程度と算出されている。

実はIPPICのよる世界需要の実績および予測は少し大きすぎるのではないかと思っています。PPGは投資家向け報告書の中で世界の市場規模は2019年度で1400億ドルとしています。この数値を使用すればトップ10企業の市場シェアは48%程度にまでアップします。

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