かんとこうブログ
2021.08.17
2021年第2四半期(4-6月)のGDP成長率が発表されましたが・・
昨日、2021年第2四半期の成長率が発表になりました。2四半期ぶりにプラスとなりましたが、その率は0.3%に過ぎず、年率換算でも1.3%に留まりました。今日のその概要とここ10年あまりの内容の推移についてご紹介します。
まずは、昨日発表された速報の概要です。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2021/qe212/pdf/gaiyou2121.pdf
このGDPに関してはずべて名目と実質の両方で発表されていますが、ここでは物価変動の影響をうけない実質の値のみをご紹介します。昨年の第2四半期(4-6月)から5四半期分の推移がグラフ化されています。グラフ中の数字はその支出項目の年率換算の金額です。支出のうち最大のものは個人消費で全体の6割弱を占めます。
全般的に今年に入り昨年のような大きな動きはありません。報道では、民間住宅(下段中央)民間企業設備(下段右)が好調であったが、個人消費(民間最終消費)(上段右、下段左)がもうひとつ伸び悩んだとありました。依然として続くコロナの感染拡大と原油価格の上昇がブレーキ要因とのことでした。
報道ではあまり触れられないのですが、GDPの中身はまだほかにもあります。政府関係支出(上段)と輸出入(下段)です。特に政府関係支出はかなり大きく、民間最終支出の1/3強の数値になります。
赤枠で囲ったのは年度別の成長率のグラフで、2020年の成長率が-4.5%であったことが改めて示されています。とここまでが概要です。内容も地味で全く面白くもなんともない報告書でした。
そこで、もう少し長いスパンでグラフを書かせてみたところ面白いことに気が付きました。面白いと言っても知る人ぞ知るで、当たり前のことなのかもしれませんが、四半期毎の主な項目(国内総生産、家計最終消費支出、民間企業設備、政府最終消費支出)について、2008年から2021年までグラフにしてみました。データは下記URLより引用しました。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2021/qe212/gdemenuja.html
この4つのグラフは、縦軸の始まりと終わりの関係がすべて同じになるようにしてあります。別な言い方をすると縦軸の最大値:最小値=3:2になっています。そうした理由は、それぞれの傾きを見てほしかったからです。参考までに直線近似した場合の近似式を載せていますが、そんなものを見るまでもなく、最も増え方の多いのが政府最終消費支出で、最も少ないのが家計最終消費支出です。おおよそで言えば、国内総生産の傾き=家計最終消費の傾き+民間企業設備の傾き+政府最終消費の傾きになります。そして国内総生産(GDP)の増加の約半分は政府最終消費支出の増加によるものです。恥かしながら今まで知りませんでした。
私には、このことの是非を論じるまでの経済学的知識はありません。がしかし、少なくともショックでした。GDP成長率の長期間にわたる低迷が、日本経済の大きな課題であり、賃金がいつのまにか安い国になっているのもそこに根本原因があると思っておりました。しかるに、その低い成長率の半分もが政府関係支出によるものであったとは驚きでした。このグラフを見るとやはりGDPの最大部分を占める個人消費が伸びないといけないということになるのでしょうが、個人消費を伸ばす良い手立てなどあるのでしょうか?
せっかく個人消費の推移についてのグラフを作成したので、いつも紹介している「消費動向調査」と「景気ウオッチャー調査」のそれぞれの指数の推移との対比をしてみました。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2021/0810watcher/bassui.html
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/honbun.pdf
右側が消費動向調査と四半期GDPの家計最終消費支出、左側が景気ウオッチャ-調査と四半期GDPの家計最終消費支出の比較です。当然ですが、どちらの場合も基本的には上下のグラフの山谷は一致しています。細かいところでは上下で一致しないところもありますが、大筋ではリーマンショック、東日本大震災、消費税増税、コロナ禍と言ったところで個人消費は低迷しています。となれば言うまでもなく、現在で最も有効な個人消費への刺激策は、コロナ禍の一刻も早い収束ということになります。別に、こうしたグラフを持ち出さなくても判ることではありましょうが、グラフもまたそのことを饒舌に語っています。