かんとこうブログ
2021.08.04
Coatings WorldのTop Companies Report
先日お知らせしたCoatings World社のTop Companies Report(世界の塗料メーカーの売上金額ランキング)がようやく昨日(現地時間一昨日)発表になりました。(下記URL) 今日はその概要についてご紹介します。
まずは、気になる売上トップ30社のグラフからです。この売上はUS$に換算されていますが、この時のレートはその会社の決算期の最終日のレートが使用されているとされています。
このグラフで、赤棒は順位を上げた会社、水色棒は順位を下げた会社です。
このグラフの最大の注目点は、Sherwin Williamsがトップを奪ったということです。ここ数年王座に君臨していたPPGが2位になりました。悲願のトップに立ったというところですが、実はSherwin WilliamsはValsperを吸収して以来、会社の売上としては、PPGを上回っていました。ただし、このCoatings World誌が、Sherwin Williamsの売り上げの中に含まれている塗装用具・器具の分を除外していたために2位に甘んじていたという事情があります。2020年も同じように塗装用具・器具の売上は除外されていますが、それにもかかわらず売上を伸ばすことができ、一方PPGは売上を減らしたため順位が逆転したというわけです。
トップ10の中におけるこれ以外の変化としては、関西ペイントが8位から6位へ上昇し、AxaltaとBASFがひとつずつ順位を下げていますが、ここらあたりはもともと僅差でしたので、大きな動きでありません。
11位から20位まででは、KCCの大躍進が目立ちました。ただしこの会社の売上は時々大きく変化してきていますが、その変化についてほとんど説明されたことがありませんので詳細は不明です。参考までに2019年のグラフを示します。
2020年のトップ30社について、2019年から2020年にかけての変化を表にまとめてみました。
やはり2020年はトップ30社と言えどもコロナに苦しんだ年であり、売上を増加した会社と減少した会社が下図としては相半ばしています。大きく売上を伸ばした会社が4社あり、それぞれに理由があると思いますが、現時点で調べきれていません。
次にランク入りした会社の数の推移をご紹介します。ランクインした会社数(右の図)は、昨年から1社減り81社でした。その減った1社(Ennis Flint)はPPGに買収されています。
この 10年間でみれば、ランク入り会社数は緩やかな減少傾向にあり、毎年約 0.5 社減少しています。一方左の図は、世界の塗料に関する総需要の実績(2015 年まで)と予測(2020 年まで)です。(Global Paint and coatings Industries Market Analysis (2015-2020) より引用)古いデータですが、手元にはこれしかありません。世界の塗料需要は。この間およそ年率 5%で成⾧するとしています。これが正しいとすれば、ランク入り企業数は増加傾向にあってもよいと思われますが、ランクイン企業が増加しないということは、ランクイン企業においても、M&A が行われてきたことの証とも言えるのではないかと思います。
昨年もご紹介したように、こうした不自然な推移は他の側面からも見て取れます。
横軸は等間隔ではありませんのでご注意ください
左図は、1-3 位の合計、1-10 位の合計、1-20 位の合計、1-30 位の合計の推移を示していますが、いずれも順調に売り上げを伸ばしているように見えます。しかし、上位 30 社のどの階層が売上げを伸ばしているかを見た右の図では、大変興味深いことに、11-20 位の売上合計は、ほとんど停滞しています。従って左の図で示された全般的な増加傾向は、主として1-10 位の上位メーカーに牽引されたものであることが理解されると思います。この 11-20 位の売上合計の停滞は、企業買収によるものと推定されます。4-10 位の売上合計も 1-3 位の売上合計を上回る勢いで増加しており、巨大化傾向がトップ 10 全体で起きていることを示しています。
今の現象をもう少し細かく見てみます。
このグラフの横軸は等間隔ではありませんのでご注意ください
縦軸の縮尺がそれぞれ異なっていますが、それぞれの階層の年平均増加率(CAGR)の数値にもご注目ください。先ほど述べたように11-20位のCAGRが最も小さくなっています。
各階層ではなく、定点位置(1位、10位、20位、30位)の推移においても似たような現象が見られます。
このグラフの横軸は等間隔ではありませんのでご注意ください
定点順位でもやはり20位の会社の売上がほとんど増加しておらず、11-20位の売上が増加していないのと呼応する動きになっています。
冒頭書きましたように、2020年は大きな動きは少なく、したがって全体的な傾向は昨年までと変わりはありません。市場の寡占化が進んでいるのかどうかについては、世界需要の正確な数値が判った時点で行いたいと思います。
今年は事情があって、個々の会社の解析を行う余裕がありませんので、発表を受けての解析をとりあえずこれで終わりとします。