かんとこうブログ
2021.08.13
ワクチンでデルタ株の感染は防げるのか?
一部にはワクチンの接種が進めば感染が抑制できるという楽観論がいまだにあるようですが、先日ご紹介したように、欧米諸国を見ると、デルタ株が主流となった今、それは期待できないという状況になっています。ワクチンの本来の目的は重症化防止であり感染抑制は副次的なものであるので、過度な期待は避けるべきと思います。
今日は、一応信頼がおけると思われる試験データでデルタ株に対する各ワクチンの感染抑制効果がどの程度あるのか見てみたいと思います。
デルタ株に限ってみると、調べた限りでは意外にデータは少ないという気がします。私が確認できたデータを示します。
左からカナダ予防接種研究ネットワーク、イングランド公衆衛生庁、イスラエル保険省です。引用した情報元のURLを下記に示します。
https://medicaldoc.jp/news/202107n0190/
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/07/16bdadf02845ac35.html
カナダ予防接種研究ネットワークのデータでは、デルタ株に関して、1回目接種時での感染抑制効果は、モデルナ72%、アストラゼネカ67%、ファイザー56%、2回目接種時ではファイザー87%という結果が報告されています。これらは概してもともとの新型コロナウイルスの原種アルファ株に対してよりも抑制効果が低くなっています。
一方イギリス公衆衛生庁の結果では、デルタ株に関して1回目接種時での感染抑制効果は、アストラゼネカ30%、ファイザー36%、2回目接種時では、アストラゼネカ67%、ファイザー88%となっています。1回目接種時の効果が先ほどのカナダの結果に比べて低く評価されています。
イスラエル保険省の結果は、もう少し踏み込んだデータを提供してくれています。ワクチンの効果の持続性についてショッキングな結果が報告されています。ワクチンはファイザー製です。下にグラフ化してみました。左のグラフがワクチン接種からの経過月数と感染阻止率の推移です。3か月を過ぎると急激に低下していくことがわかります。もともとのアルファ株については、6か月経過しても感染抑制効果は低下しないというデータが得られていたと記憶しています。デルタ株の出現は明らかにワクチンの効果にも及んでいます。
上の右の図で、感染抑制効果、軽症に抑える効果は確かに低下してきているようですが、入院抑制効果、重症化抑制効果は、1月の接種者(6か月経過)でもほとんど他の接種者と変わりなく、まだまだ高率で発揮されているそうです。ワクチンの所期の目的である重症化抑制はデルタ株に対しても維持できているようです。
以上が調べた内容ですが、昨日新たな情報が入りました。下記URLから引用します。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20210811-OYT1T50195/
「米国の医療機関メイヨー・クリニックなどのチームは、ミネソタ州のワクチン接種者と非接種者計約7万7000人のデータを解析した。デルタ株の感染割合が70%に達した7月時点で、感染予防効果はファイザー製で42%だったのに対し、モデルナ製は76%と高かった。(中略)デルタ株がほとんど確認されなかった今年初め時点での感染予防効果はファイザー製76%、モデルナ製86%。いずれもデルタ株の出現で効果が低下したが、モデルナ製の方が低下の幅が小さかったとみられる。」
つまり、「ファイザーワクチンとモデルナワクチンを比較すると、デルタ株のなかった頃にくらべ、デルタ株の出現により(時間の経過もあって)ファイザーワクチンは大幅に感染抑制効果が低下したが、モデルナはそれほどでもなかった」ということです。
様々な変異種が登場し、しかも当初の予想とは異なり弱毒化することもなく、むしろ重症化する傾向にある中で、ワクチンの効果についても刻々と評価が変わらざるを得ない状況にあると思います。公的機関でこうした情報を整理し速やかにかつ正しく国民に伝えるように望みます。