かんとこうブログ
2021.11.09
衆議院選挙に見る、得票数、得票率、議席獲得数の関係
10月31日に終了した衆議院選挙の開票結果を見ながら、ふと思ったことを調べてみました。それは、一体どのくらいの得票率があれば政権を獲得できるのかということです。以下2000年以降の衆議院選挙における得票数、得票率、対有権者得票率、議席数についての推移を示していきます。この間2009年の選挙のみ民主党が政権を獲得しましたが、それ以外はすべて自民党と公明党の連立政権でした。最初にお断りをしておきますが、これは決して政治的な意図があって書いていることではなく、純粋に統計上どうなっているという疑問を明らかにしたいだけだということはご理解ください。
まずは、政権政党の得票数からです。得票数は総務省の統計資料から引用した、比例代表選挙部分における得票数です。以下すべて比例代表部分の得票数です。赤丸は政権獲得(総理大臣選出)を意味しています。
まず目を引くのが自民党の得票数です。今回の選挙は自民党苦戦が予想されていましたが、実は得票数からみると決して少なくありません。むしろ過去数回の中では多い部類に入ります。公明党は非常に安定していますので、結果として政権政党の得票数としては2000年以降7回の選挙では多い方から2番目の得票数でした。
政権政党が獲得した票数について、最高は2005年の約3500万票、最低は2012年の約2500万票でした。これは選挙時点で、どのような対立政党が存在していたかに大きく影響されており、2012年では、今回躍進した日本維新の会が、今回を上回る議席数を獲得していたことが影響要因として挙げられます。
次に得票率を見てみます。
得票率は、得票数とは少し異なる傾向にあります。それは当然ながら投票率が関係するからです。2000年以降7回の選挙で、政権獲得政党が過半数の得票を得たのは今回を含めて3回に過ぎません。最高は今回の53.5%、最低は2012年の39.7%でした。この得票率をさらに、有権者全般に対する得票率という数字で見てみます。
これは、得票率にさらに投票率を掛け合わせたものです。政権獲得政党としての対有権者得票率が最も高かったのは2005年の35.3%、最も低かったのは2012年24.1%でした。自民党単独でみれば、最高が2005年の26.2%、最低が2012年の16.8%でした。淡々と事実を言えば、国民全体の約1/6の支持により総理大臣を選出できたということになります。
それでは、議席数はどのような割合になっていたでしょうか?議席獲得率%を見てみましょう。
これは得票数や得票率とも全く異なる傾向になっています。とにもかくにも政権獲得政党が60%以上の議席を取っています。得票率では最も低かった2012年ですが、議席獲得率では多い方から2番目に数値になっています。これは大変意外な結果でした。対立政党が多くあると票は削られても最終的な議席数はさほど変わらないとも言えるかもしれません。そこで得票率、対有権者得票率と議席獲得率の相関図を作成してみました。
R2乗値は低いのですが、得票率と議席獲得率は逆相関の関係にあると計算されました。いやむしろ直接的な関係はないというべきでしょう。何とも興味深い結果です。
現在の衆議院の選挙制度は、小選挙区プラス比例代表併用制です。小選挙区制のみでは少数意見が全く反映されないからという危惧から比例代表制が併用されていますが、上のグラフを見る限り比例代表併用効果が十分ではないのかという気もします。こうして衆議院の選挙結果を見てきましたが、実は最も気になったのは投票率でした。以下に2000年以降の国政選挙の投票率を示します。
衆議院はかろうじて50%を上回っていますが、参議院は2019年に50%を下回ってしまいました。民意の反映を議論するのであれば、まずは投票率の向上ではないかということを改めて思いました。