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かんとこうブログ

2022.02.15

パキロビッドの併用禁忌薬とその理由

210日に抗ウイルス薬パキロビッドが特例承認されました。昨年1224日にその中身と作用機序については一度ご紹介していますが、今日は、実際に使用するとなると注意しなければならないこと、特に普段服用している薬との併用禁忌についてご紹介したいと思います。

パキロビッド(パクスロピド)は抗ウイルス薬であり、体内に侵入したウイルスの増殖を防ぐ薬です。さまざまな新型コロナウイルスの治療に使用される薬剤について、大変わかりやすく整理したサイトがありましたのでそこから引用させていただきます。(Yahooニュース、倉原優医師の解説:下記URL

https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220211-00280830

この図の中で赤枠で囲った「ニルマトレビル/リトナビル」の組み合わせが「パキロビッド」であり、発症から5日以内に服用というのは、先行して承認されたモルヌピラビルと同じ服用条件です。この「パキロビッド」は、二つの薬剤の合剤となっており、それぞれの構造と役割は以下の通りです。

Wikipediaから引用

すなわち、ウイルスの増殖を防ぐ主役は、「ニルマトレルビル」であり、複製したウイルス部品の集合体である大きなタンパク質を部品に分解するための酵素の働きを阻害して増殖を防ぎます。一方、「リトナビル」は、この主役である「ニルマトレルビル」が体内で分解されることを防ぎ、「ニルマトレルビル」の働きが持続するよう助けます。この「パキロビッド」発症後5日以内では、高い効果が期待できるとされている一方で、併用することが禁止されている薬剤が多く存在します。薬剤師KANTASのブログから引用させていただきました。(下記URL

https://goassetmanage.net/paxlovid_interaction/3025/

実にたくさんの薬が併用禁忌となっていますが、この理由は、どうもリトナビルの働きにあるようです。上でリトナビルの働きはニルマトレルビルの分解を遅らせる役割であると説明してありました。このことが併用禁忌と関係があるのでしょうか?

併用禁忌の理解のためには、上の表の中で赤字で書いてあるCYP3A4を理解する必要がありますのでCYP3A4とは何かから説明したいと思います。

CYP3A4とは人体内の生体異物を代謝する酵素であり、多くの医薬品(薬剤)の代謝に関係しています。リトナビルによるCYP34に対する働きの一つ目は阻害であり、多くの薬物の代謝が阻害されることによってそそれら薬剤の血中濃度が必要以上に上昇してしまいます。もう一つの働きは、逆にCAP3A4の代謝を誘導することで、その薬剤代謝が進み血中濃度が必要以上に低くなってしまうことです。方向性は異なるものの、薬剤の効果が期待できる血中濃度が保持できず、両方とも薬剤本来の効果が期待できなくなるというもののようです。

話は横道にそれますが、こうしたCYP3A4への阻害効果はグレープフルーツに含まれるフラノクマリン類にもあり、薬を飲むときにグレープフルーツを食べることには注意が必要であるという話を聞いた記憶のある方も多いのではないかと思います。同じ柑橘類でもレモンやミカンはフラノクマリン類を含まないか含むとしても少量であるので、グレープフルーツのような阻害効果がないとされています。

いずれにせよ、このパキロビッドは、発症後5日以内に服用を始めれば効果が期待できる抗ウイルス薬です。しかしその服用には、併用禁忌薬剤がたくさんあることを念頭に、お薬手帳とともに診断を受けることが必須となります。

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