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かんとこうブログ

2022.02.07

ワクチンの感染予防効果は各国で異なるとすれば・・

再三ご紹介している首相官邸ホームページのワクチン歴別の10万人あたり新規陽性者数ですが、117日~23日までのデータを見るにつけ、ワクチンの感染予防効果は国によって大きく違っているのではないかと思うようになりました。すなわち、2回接種では極めて不十分でブースター接種でのみ感染拡大が阻止できるという考え方は正しいのだろうかという疑問が生じたということです。

もちろん、日本でもブレークスルー感染が生じ感染が拡大しています。しかし、本ブログで紹介しているように、117日から23日においても、ワクチン2回接種による感染阻止(予防)効果は全体で80%程度あるのです。確か、2回ワクチン接種では接種後時間が経過するとほとんど感染予防効果がなくなるような話ではなかったかと思いデータを探して調べてみました。

ところがなかなかデータが見つからず、ようやく使えそうな思われるデータが厚労省のサイトから見つかりました。「第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 令和31028日 提出資料(下記URL)の中に以下の内容の報告がありました。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/uploads/11-2.pdf

細かなことを省略しますが、要するにデータはファイザーとイスラエルのものであるということと、2回目接種者に比べるとブースター接種者は、90-95%程度感染または発症率が下がるというものです。これをみるとまさに劇的な効果があるということになります。この調査においてイスラエルの調査対象者は数十万人以上であり十分信頼に足る数と思われます。

一方で、新しいデータとしてイギリス健康安全庁のデータが見つかりました。このデータには知りたいと思っていた2回目接種者におけるデルタ株、オミクロン株に対しての感染予防率が示されています。(下記URL

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1050236/technical-briefing-34-14-january-2022.pdf

結果の概要を下に示します。

これによると、ファイザーおよびモデルナの2回接種については、オミクロン株に対する感染阻止率(予防)率は、2回目接種後20週間経過すると10%程度にダウンするとなっています。半年もたたないうちにほとんど感染予防効果がなくなるということです。さらに言えば2回目接種直後でさえオミクロン株に対しては65-70%程度しか予防効果がないということであり、ブースター接種しても回復してせいぜい65-70%、つまり2回目接種直後までしか戻らないというのです。おまけにブースター接種後10週間以上経過すると45-50%に低下するありました。これはおそらく日本人が持っているブースター接種に対する期待効果とは異なっているのではないでしょうか?

より具体的にイメージがつかめるようにこの資料のグラフをお見せします。ファイザー2回接種者についてのグラフです。

続いてモデルナ2回接種者についてのグラフです。アストラゼネカは日本では使用されていないため割愛しました。

ファイザーとモデルナは、2回接種後あるいはブースター接種後の感染予防効果について、同じような推移を示しています。いずれもデルタ株に対する感染予防効果は2回接種後20週間を過ぎても7080%あるのに対し、オミクロン株に対しては上述したように時間の経過とともに大幅に減少しています。

ブースター接種後の感染予防効果の回復のしかたも似ており、デルタ株については2回目接種直後と同等かそれ以上に回復、オミクロン株については2回目接種後とほぼ同じレベルに回復しています。

また、2回目まで異なるワクチンをブースターで接種する、いわゆる交差接種については、特段に効果は認められないように思います。

イギリスではこのような結果が報告されていますが、翻って日本はどうかというと、変異種別に区分けした大規模調査の結果はなく、首相官邸ホームページのワクチン接種歴別の感染者数情報が最も定量性の高い情報と思っています。一時中断されていたこのデータは1月から再開されていますが、11日の時点で、少なくとも大半の高齢者は2回目接種時点から20週間を経過しているはずです。にもかかわらず、先般来ご紹介しているように、日本における高齢者のワクチン接種による感染予防(阻止)効果は、昨年の89月に比べると若干は低下しましたが、依然高い数値が維持されているのです。(下表、図)

イギリスと日本の2回接種後の感染予防(阻止)効果がこれほど異なる理由は一体何でしょうか?説明できるとすれば、「ワクチンの感染予防効果を決定づける要因は、大きく二つありひとつはワクチンそのものに起因するもの、具体的にはワクチンの種類、接種時期からの経過時間などであり、もうひとつはワクチン接種者の行動に起因するもの、具体的には感染リスクへの接触頻度などである」ということではないでしょうか?

この推論は日本の国内においても、2回目接種からの期間が高齢者よりも短い若年層の感染予防効果が低いことによっても支持されます。

本項の論旨は、今の日本の状態は、これまで報告されてきた諸外国のように現時点でワクチンの2回接種がほとんど効果を失っている状態ではないのではないため、国民が期待しているほどの感染防止効果が得られない可能性があるのではないかと言っているのです。

ワクチンの効果は重症化の予防であり、感染予防ではないと繰り返し言われてきましたが、その一方で感染予防効果が全くないと考えている人は少ないのではないでしょうか?私の懸念は、123日時点でワクチン2回接種者の感染予防効果が80%もあるということであれば、ブースター接種をしても感染予防効果の上積みの余地が少く、感染拡大抑制にはさほど効果が期待できないということにならないだろうか、ということです。

一方で、いまだワクチン2回接種の感染予防効果が80%とあるとなるとなぜ感染がこれほど急拡大しているかという疑問に答える必要がありますが、それはウイルス感染力の指数である基本再生産数が、デルタ株よりもさらに高いことにより説明が可能だと思います。もともとの新型コロナウイルスの基本再生産数は、2.5と考えられています。これに対しデルタ株の基本再生産数は59と言われており、集団免疫を有するためには9割近い人が免疫を持つ必要があるとされています。オミクロン株はデルタ株よりもさらに基本再生産数が高いことは間違いなく、となれば、ほぼ全員が免疫を持たない限り理論上は感染が拡大することになります。

123日時点での2回ワクチン接種者の感染予防効果が日本全体で80%であると言いました。また、現時点で2回ワクチン接種率は80%弱になっています。ということは2回のワクチンによって感染から守られているのは、80×80%で国民全体の64%程度となります。ここから計算すると。日本の人口は12700万人ですので、4500万人以上の人が現時点でさらに感染する可能性があるということになります。現在の一日10万人程度の新規感染者数ではm可能性のある人全員が感染するまでに1年以上かかる計算になります。集団免疫など望むべくもありません。

ワクチンの感染予防効果が、ワクチン接種そのものだけでなく、接種者の感染リスクへの接触頻度にも影響されているとすれば、ワクチン接種の促進だけではなく、今以上の行動変容を促すための働きかけも必要になるのではないかと思います。

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