かんとこうブログ
2022.02.09
小林陵侑選手の強さの秘密を科学的に解明
現在行われている北京オリンピックで男子ノーマルヒルで金メダルを獲得した小林陵侑選手を対象として、北翔大学、神戸大学、理化学研究所の3者で実施した「富岳」によるまるごと空力シミュレーションの結果が2月4日にプレスリリースされていました。詳しくはそのプレスリリースの模様がYOUTUBEに公開されています(下記URL)ので、そちらをご覧ください。15分弱のプレゼンテーションで大変わかりやすく小林選手の強さの秘密が解析されています。
https://www.hokusho-u.ac.jp/info/?i=2846
この記者会見を報じた科学技術振興機構のホームページから一部を引用してご紹介したいと思います。
https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20220207_g01/index.html
実際のジャンプにおける空力シミュレーションの結果です。小林選手と比較対象選手(コンチネンタルカップに出場できる程度の選手)との空中における揚力、抗力とその比率の踏切から着地までの推移をまとめたグラフです。小林選手の大きな特徴は①踏切直後に揚力と抗力が素早く立ち上がる②揚力が後半に大きく増加する③踏切直後を除き抗力が小さい④その結果、飛行中揚抗比が1.0を上回る時間がほとんどである ということに集約されます。
このうち①については飛び出しの姿勢によるものと解説されています。
「ジャンプの選手には、飛び出し姿勢が小林選手タイプか葛西選手タイプのどちらかである場合が多く、小林選手タイプの飛び出し姿勢では、抗力も大きいと同時に揚力も大きく受ける。ただし、どちらが有利か一概に言えない。」
また②については以下のように説明されています。
「飛行の後半には、前から来た風が巻きつくように背中側に流れ、気流の乱れが小さく、背中側にかかる圧力を抑えていた。これが揚力の増大につながっているとみられる。気流の乱れが小さい理由はよく分からず、今後の研究課題となった。」
また④については「飛行の後半には一般に、飛ぼうとする向きと空気の流れる向きのなす角度「迎角」が次第に大きくなり、下から風を受けるようになる。(下図)力学的に不利な姿勢で、失速のリスクが高まる。ところが小林選手の場合、揚抗比を維持し、揚力を保って飛行距離を伸ばしている。」と説明しておりその理由については「今までの考えだけで物事を語れない。すごく驚いた」と山本教授。坪倉教授は「同じ姿勢で飛んでいけば普通、失速する。仮説だが、失速しないのは微妙に迎角を変えているからでは」との見方を示したそうです。
最終的な解明には至っていないようですが、小林選手が絶妙な空中姿勢を保つことで、揚力を最後まで維持しつつ、抗力を最小化することで飛距離を伸ばしていることだけは確かなようです。
小林選手のラージヒルと男子団体での活躍にも期待しましょう。