かんとこうブログ
2022.02.22
世界のTOP3の2021年度(1-12月期)決算 その1
塗料製造業の世界TOP3の2021年度決算が2月上旬に発表されていました。今日から3日間にわたり1社ずつ簡単にご紹介することにします。順番は日本円に換算した売上金額の多い順にご紹介します。最初はSherwin-Williamsです。同社は塗料だけでなく、塗装用具も販売していますので純粋に塗料の売上だけではないのですが、残念ながら内訳は不明ですので、仮に暫定1位としてご紹介させていただくことにします。まずは第4四半期および通年の売上と利益の一覧表を示します。詳細は下記URLをご参照ください。
Sherwin-Williamsの第4四半期は、原材料の高騰をうけ厳しい数字が並んでいます。売上こそ前年比で微増ですが、税引き前利益は前年比で大幅減となりました。通年でも同様で売上前年比が微増ですが、地引前利益前年比は微減となりました。売上が回復した第2、第3四半期の貯金をもってしても通年で前年並みの税引き前利益を確保することができませんでした。通年での売上高は199億ドルですので、約2兆3000億円(1$≒115円)となります。
部門別では、南北アメリカに存在する直営店からなるアメリカGはさすがに強く、部門利益の前年比も微減に留めていますが、自社ブランド以外の汎用品からなる消費者ブランドGは第4四半期、通年とも売上自体が前年比微減、部門利益は前年比大幅減でした。旧バルスパーからなる機能性塗料Gは、売上を前年からかなり伸ばしていますが、部門利益としては第4四半期が大幅減、通年が微減となりました。
これらの数字に対するコメントは、表の右に示した通りですが、通年では原材料の入手難、価格高騰が要因として挙げられ、第4四半期ではこれらに加え、建築、工業の需要低迷が要因として挙げられています。
Sherwin-Williams社は、毎回世界のTOP10のシェアと塗料の需要別内訳を決算資料に掲載していますので、今回もそれをご紹介します。
左図が世界のTOP10企業とそのシェアです。この図で注目したいのは、TOP10で世界の50%を占めていると書いている点です。TOP10の顔ぶれはRPM(接着剤や防水材の比率が高い)が含まれていない点を除けば、7月に発表されるCoatings World誌のレポートとほぼ一致しているのではないかと思います。Coatings World誌のランキングでは全体数量が示されませんので比較ができませんが、いずれにしてもTOP10社で大きなシェアを持っていることだけは間違いありません。
右図は、世界の需要別の売上です。建築が40%、新製品用塗料が40%、特殊塗料が20%という内訳ですが、注目するポイントは全体の量と金額で、数量は換算すると3,820万立方メートル(比重1.2とすると4,587万トン)、金額は日本円で15兆7600億円ほどになります。感覚的にはおおむね妥当なところと感じます。このData SourceはKNG Researchとなっていますが、Sherwin Williamsはこの数字について検証していないとしています。
次にアメリカの建築市場について2つの図をご紹介します。一つ目は建築塗料の内訳です。
最も多いのがDIYで41%、次いで塗装業者による居住用建築物の補修が31%、次いで塗装業者による非居住建築物の補修が12%とプロによる補修が上位に並び、新築はあわせて17%(居住用12%、非居住用が5%)となっています。数量は325万立方米で比重1.2をかけると390万トンとなります。このグラフのタイトルの英語表記では「US Architectural Paint Industry」とありますので、アメリカのみの消費量ではないかと思われます。さすが建築塗料大国です。
日本人から見るとDIYが41%もあると感じられるかもしれませんが、実はこのDIYは年々減少傾向にあります。
この図は1980年以降のアメリカとカナダにおけるDIYと塗装業者の割合の比率を表したものですが、40年間で比率が逆転しており、かつてはDIYが6割塗装業者4割だったのが、今やDIY4割塗装業者6割になりました。この傾向はまだ続くとコメントされていました。
以上がSherwin-Williamsの決算内容および私が興味を持った市場情報についてご紹介しました。原材料高騰がSherwin-Williamsにとっても大きな問題であり、値上げを実施していると書いてありますが、具体的な%は書かれていません。原料高騰やそれに対する値上げについては明日以降のPPGやAKZO NOBELにはしっかり数字で書かれていますので、ご紹介させてもらう予定です。明日はPPGの決算をご紹介します。