かんとこうブログ
2022.12.21
核融合発電の歴史的な第一歩
先週ニュースで、アメリカの研究機関が核融合を人工的に起こし投入した以上のエネルギーを得ることに成功したと報じられました。今日は画期的なこの研究成果についてネット情報から引用してご紹介したいと思います。
実際にどんなことが行われたかをNHKのサイト(下記リンク先)から引用してご紹介します。
“核融合実験 効率よく十分なエネルギー発生に成功” アメリカ | NHK
「アメリカのエネルギー省は、カリフォルニア州にある国立研究所が今月5日に行った核融合実験で、投入したエネルギーよりも多くのエネルギーを発生させることに成功したと発表しました。実験では、容器に閉じ込めた水素に強力なレーザーを当てて核融合を起こし、投入したエネルギーのおよそ1.5倍にあたるエネルギーを発生させたとしています。
核融合は二酸化炭素を出さないなど次世代のエネルギー源として期待されています。しかし、核融合を引き起こすには、強力なレーザーや電磁石を使って太陽のような恒星の中心部にも匹敵する高温・高圧の状態を作る必要があるため、大量のエネルギーを投入しなければならず、効率よく、投入した以上のエネルギーを発生させられるかが大きな課題の一つでした。」以上全文引用
ということなのですが、そもそも核融合とはどんなもので、これまで人類が実用化している原子力発電とは何がちがうのでしょうか?国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構のホームページの資料(下記リンク先)から引用してご紹介します。
誰でも分かる核融合のしくみ | 核融合とは? - 量子科学技術研究開発機構 (qst.go.jp)
まず、核融合とは下図のように水素のような軽い元素がくっついて重い元素に変わることを言います。このとき莫大なエネルギーを発生します。自然界に例をひけば、太陽において水素2原子から核融合によりヘリウム1原子が生成し、あれほどの巨大なエネルギーを発生していると言えば核融合の意義が容易に理解できるかもしれません。
この図では重水素と三重水素から核融合によりヘリウムと中性子が生成する場合を示しています。重水素と三重水素というのは普通の水素と異なりそれぞれ中性子を重水素がひとつ、三重水素がふたつ持っている特殊な水素ですが、詳細は気にせず、陽子と中性子の総数が核融合前後で変化していないことだけに注目してください。
この核融合反応の前後で陽子と中性子の数は変化していないのですが、核融合によりわずかに重量が軽くなるのです。この軽くなった分が、有名なアインシュタインの質量保存の法則に従い莫大なエネルギーに変化します。軽くなる質量はわずかであっても莫大なエネルギーが放出されるのです。
莫大なエネルギーとはどれほどのものかというと、重水素、三重水素の混合物1グラムから石油約8トン分に相当するエネルギーが得られるとされています。さらにこの原料となる資源も地球上に豊富に存在しているだけでなく、核融合は二酸化炭素や窒素酸化物を放出しません。加えて、生成する放射性物質も百年ほどで百万分の一程度に弱まるため、原子量発電に比べ放射性廃棄物の負荷も極めて軽いという利点もあります。
従来の原子力発電が核分裂によってエネルギーを得ていたのにくらべ、それとは逆の核融合による発電は上述したように環境的にも資源的にもメリットの多い発電方式であることは明白です。しかしながら核融合を起こさせるのには莫大なエネルギーが必要であり、実現の目途はたっていませんでした。
今回の実験成功により注入したエネルギーよりも大きなエネルギーを得ることには成功したものの、発電の実現にはさらに数十年単位の年月が必要と言われています。そうであったとしても、今回の実験成功が人類に希望の光を与えてくれたことは間違いのない事実です。