かんとこうブログ
2023.01.26
筋雲と冬の稲妻の話
寒波襲来時の天気図には日本海を中心に筋雲が(下の写真)大挙して現れます。筋雲が現れると雪が降ると条件反射のように思ってしまいますが、この筋雲とはいったい何者なのでしょうか?そして筋雲と冬の稲妻の関係とはどんなものでしょうか?今日はこれらについて調べたことをご紹介したいと思います。
筋雲について、これも別なウエザーニュースの説明を引用させてもらいます。
「衛星の写真ではハケではいたような雲にも見えますが、実は筋状の雲の正体は積雲や積乱雲なんです。
暖流の影響で比較的暖かい日本海に、冷たい季節風が吹き付けると、空気の下層だけが暖められます。すると上昇気流が発生し、積雲や積乱雲が作られるという仕組みです。
空気は上下の温度差が大きくなると、温度差を解消しようと対流を起こします。この時、暖かく軽い空気が上昇する部分と冷たくて重い空気が下降する部分ができます。(上図上部分)筋状に雲が並ぶのは、空気が上昇して雲ができる部分と空気が下降して雲ができない部分が交互に並んでいた(上図下部分)からなんです。」(以上図とともに引用)
さて筋雲の正体とできる仕組みはわかりました。でも積乱雲と言えば、夏に代表されるように雷を伴うのではないかと想像されます。果たして冬の積乱雲は夏の積乱雲と違うところがあるのでしょうか?
これも別なウエザーニュースの記事から引用します。
「夏と冬の積乱雲を比べると、冬の方が圧倒的に背が低く、規模の小さいものになります。落雷数は極端に少なく、遠くにいてもゴロゴロと音が聞こえる夏とは違い、冬の雷というのは音もなく近づいてきます。
落雷数が少ないというのは、良いことのようにも思えますが、実は一発の威力が強くなります。一発雷と呼ばれる冬の雷は、なんと夏の雷に比べ100倍以上に達する凄まじいエネルギーを持っています。
また、冬季雷は、夏に比べて予測が難しいという特徴もあります。」(引用おわり)
夏の雷と比べた場合の冬の雷の特徴がわかりましたが、冒頭の写真から想像できるように冬の雷は地域的に大きな特徴があります。それは主として日本海側で発生するということです。下図(気象庁のサイトから引用)は日本各地の雷の発生状況を示していますが、多くの地域では、発雷日数は夏の方が多くなっていますが、北陸を中心とした日本海側は冬の方が多いのです。冬の雷は日本海側特有の現象と言っても良いかもしれません。
ところで、今日のタイトルに「冬の稲妻」と書いたのはもちろんアリスの「冬の稲妻」を意識してのことです。あまりにも有名な歌ではありますが、なぜ冬なのかということがそもそもこれを調べ始めたきっかけでした。ここまで調べてきたところで、歌詞を見直してみました。著作権の関係があるのでここに表示できませんが、歌詞のどこを探しても冬という言葉はでてきませんし、季節を特定させる言葉も見当たりません。しかし、曲のイメージはまさに「冬の稲妻」であることは明瞭です。まさに冬の稲妻が体を貫き、心を引き裂いたような衝撃をうけたことがイメージされます。普段は日本海側でしかお目にかかれない「冬の稲妻」ですが、人間の心情にはしばしば登場するのかもしれません。
とここで本題は終わりますが、調べているうちに「稲妻は上から下 でも落雷は昇雷なのです」という日本気象協会の記事に行き当たりました。これはどんなことを言っているのでしょうか?これも引用してご紹介します。
「稲妻が上(雲)から下(地表)に降りるのは錯覚でもなんでもありません。発達して垂れ込めた雷雲の下部分にたまった電子(マイナス電荷)は、プラス電荷をもつ地面へと、槍のようにプラズマ放電の枝を盛んに突き出します。これが暗い雲からギザギザの光脈で降りてくる稲妻、稲光です。この稲妻の先端が中空にとどまるうちは美しい光の枝のように見えます。ところが、先端がさらに伸びて地面近くまで来たとき、劇的現象が起こります。地表の正電荷がこのプラズマの枝を捉えてつかむのです。その瞬間、大量の正電荷が光脈に流れ込みます。つまり電流が一気に流れるわけです。すると、光脈は目もくらむような激しい光と轟音を放つ光の柱に変貌します。これが落雷です。
電子によるプラズマ放電、私たちが目視している(目視できる)稲妻は上から下へと伸びていますが、落雷現象は下から上へと昇っている、ということになります。地表近くまで降りてきた電子が作ったプラズマ放電の「道脈」を、電流がかけ上るわけですね。」(引用おわり)
https://tenki.jp/suppl/kous4/2019/03/31/28983.html
つまりよく目にするギザギザの光脈は稲妻であり上から下へのびているが、一気に大電流が流れる落雷は下から上へ昇っていくということだそうです。知りませんでした。日本海側以外ではあまり見る機会の少ない冬の稲妻ですが、今度見た時にはこの話を思い出していただけたらと思います。