かんとこうブログ
2023.02.06
電気料金システムは複雑不可解
このところ電気料金の高騰がニュースで頻繁に取り上げられていますが、毎月支払っている電気料金の中身を実のところよく知りませんでした。調べてみると何とも複雑不可解ともいうべき不思議な料金体系でした。今日はこの電気料金の仕組みを説明します。
ニュースでは今年4月以降の電気料金の値上の際にも標準的な家庭で〇〇%の値上としか説明してくれません。単純に1kMhあたりが何円の値上げと言ってくれればわかりやすいのにといつも思っていました。単純に言えないのは言えない訳があります。早速電気料金の料金体系から説明します。
この図は東京電力のサイトに掲載されている電気料金の内訳です。基本料金を除いても3つの部分から構成されていることがわかります。一つ目は使用量に応じた電力量料金単価です。二つ目は燃料費調整単価、三つ目は再生可能エネルギー発電促進賦課金です。基本料金にこの3つが加算されて電気料金となるのですが、3つ目の再生可能エネルギー発電促進賦課金を除き、ややこしい計算をしないと全体像が見えない、少なくとも素人にはそう見える複雑な料金システムでした。順番に説明します。
一つ目の使用量に電力量料金単価ですが、これも単純比例ではなく三段階に分かれています。大まかにいうと月の使用量が120kWhまで、120~300kWhまで、300kWh以上の3段階に区分されそれぞれ料金が異なります。しかもこの料金は全国各地の電力会社ですべてで異なっています。下図に全国の電力会社の電力量金単価を示します。
少し小さくて見にくいかもしれませんが、電力会社によって結構差があること、使用量が多くなると単価があがることはお分かりいただけると思います。通常規模が大きくなると原価がさがるというのが資本主義の常識かと思っていましたが、電力量料金については、たくさん使用する家庭ほど高い単価で電気を使用しなければならないことになります。因みにガスは使用量が多いほど単価は安くなります。
電力会社別でみると、最大規模の東京電力が最も高い会社の一つになっています。ここでも規模の原則は通用しないようです。電力量料金の設定にはいろいろな要素があると思われますが。東京電力と中部電力の場合には料金が高い理由は火力発電における使用燃料の多くをLNGが占めていることにありそうです。このことは次の燃料費調整額のところで触れることにします。
燃料費調整額とは、火力発電で使用する石油、LNG,石炭の価格変動に応じて電気料金を調整するシステムで、当該月の6か月前から4カ月前までの3か月の燃料費の平均に応じて調整を行うものです。具体的には基準価格(東京電力の場合は平成24年の1~3月までの貿易統計価格の平均をもとに計算した額)と実際の燃料価格との差分に係数をかけて計算します。実際価格が基準価格よりも高ければ増額、低ければ減額されます。この燃料調整のしくみは同じなのですがこれも各電力会社によって異なります。下表、下図をご覧ください。
規準価格が高いのは東京電力と中部電力ですが、両社に共通するのは燃料中のLNG比率の高さです。割高なLNGを多く使用すると総体的に燃料費が高くなってしまいます。しかし、ここでも疑問があります。それぞれの燃料における電気への変換効率は異なっており、LNGの場合には石油や石炭よりも変換効率が高いのですが、そうしたことが考慮されておるのかどうかです。燃料費調整には、それぞれの燃料価格に係数をかけて計算しているのですが、その係数に変換効率が考慮されているのかどうか疑問が残ります。基準価格が高ければ調整単価も高く、調整額そのものも大きくなります。
2022年3月から2023年1月までの各社の燃料費調整額(円/kWh)の推移を下図に示します。
赤い両矢印で示したのは、燃料費調整額の調整可能上限に達したため調整できなかった期間、赤い点線は、電力会社と燃料費調整額の上限設定を設けて契約している場合の調整額で、電力会社と直接契約している家庭はこの上限設定金額で徴収されていると思います。この赤い点線と青い実線との差が電力会社が負担している燃料費の差分ということになり、4月以降値上を申請せざるを得ない理由とされています。
調整額のピーク値でみると最も大きいのは沖縄電力、次いで中国電力、東北電力、東京電力、中部電力の順になります。この調整額の内訳にはいろいろな要素があるので簡単に推定することはできませんが、貿易統計の燃料価格の推移だけはわかりましたので下図に示します。(新電力ネット(下記URL)から引用)
新電力ネットについて|新電力ネット (pps-net.org)
LNGは1月に比べてピーク時の2倍に、石炭は11ケ月間で3倍に、原油もピーク時には1月の2倍近い価格になっています。石炭比率の高い沖縄電力や中国電力の燃料費調整額が大きかったのは石炭価格の上昇割合が他に比べて激しかったためかもしれません。そして東京電力と中部電力の基準価格、燃料費調整額が高めであることは最も価格の高いLNG比率が高いためと思われます。
最後に再生可能エネルギー発電促進賦課金ですが、これは全国一律に3.45円/kWhと決められており、それを使用量に掛けるだけなので簡単です。しかし、この金額3.45円/kWhは決して小さな金額ではありません。過去から見るとどんどんと額が大きくなってきています。電力会社が発電事業者から購入している太陽光発電の代金などに充当されると理解していますが、この金額の妥当性については疑問が残ります。
このように見てくると電気料金体系は誠に複雑不可解な点があり、説明してほしいところがたくさんあります。なぜ各社毎に使用する燃料の比率が大きく違うのか、なぜ家庭用料金はたくさん使うほどkWhあたりの電力料金が高くなるのか、なぜ再生可能エネルギー発電促進賦課金がどんどん高くなる一方なのか、そして未来永劫払い続けるのか、経産省は4月からの値上を認めるようですが、その根拠をわかりやすく説明してのもらいたいと思います。
明日は、4月以降予定されている値上について詳しく中身をご紹介したいと思います。