かんとこうブログ
2023.02.07
東京電力の値上申請・・具体的な値上金額は?
昨日は電気料金の複雑な料金体系について説明しました。使用した電力量に応じて3段階に料金設定がなされていること、それに加えて毎月燃料費調整額が加算または減算されること、年々増加している再生可能エネルギー発電促進賦課金がさらに加算されること、そしてこれらの料金は基本的に電力会社ごとに異なっていることなどをあげ、よく理解できないところがあるので説明してもらいたいと考えていることをお伝えしました。
今日はさらに、4月以降の電力料金の値上申請に関して、具体的な個々の料金がどのように値上げされるのかをご紹介したいと思います。ニュースでは単に標準的な家庭で〇〇%の値上としか伝えてくれませんので一体1kWhあたりいくらあがるのかがわかりません。東京電力が1月23日に発表している一般向けの資料(下記URL)がありますので、それを引用しながらご紹介します。
https://www.tepco.co.jp/press/release/2023/pdf1/230123j0401.pdf
分量の多い資料ですが、知りたいのは燃料費がいくらあがっており、そのために電気代がいくら上がるのかということだけです。まず燃料費がいくら上がっているのか?から東京電力の資料を引用します。
2022年4月以降しか書いてありませんが、2022年の2月以降燃料費調整額はそれまでのマイナスからプラスに転じその後急激に上昇していきます。9月以降は燃料費調整額の上限(基準価格の1.5倍)に達し、直接契約しているユーザーに対してはこれ以上燃料費調整額を上げることができなくなりました。以降は燃料費調整額と上限金額の差額が東京電力の負担となっていると説明しています。特に2023年に入ってからは、東京電力の負担が約7円にも達しているという説明です。ただしグラフの最下段に書いてあるように、2月分以降は政府の激変緩和措置が適用され7円/kWhが補助されますので、この分は差し引きゼロになると思われます。
さら付け加えると、このグラフは2月までになっていますが、実は燃料費調整額は3月分も決まっており約11600円(税込)となっています。3月は2月よりも下がりますし、4月以降も下がります。
こうした状況の中で、これ以上この逆鞘状態を続けられないので値上をさせてほしいということで以下の料金値上げが申請されています。
左半分が東京電力の資料から引用した図です。この図によれば、例えば第1段階料金(~120kWhまで)は25.01円(以下すべて/kWhを略す)から9.83円上がって34.84円にしたいと言っているわけですが、この現行の金額25.01円とはすでに燃料費調整額である5.13円を含んだ金額が示されています。現在の電力量料金第1段階はあくまで19.88円なのですから、いきなり25.01円と書かずに19.88円に5.13円を足した金額であることから説明すべきです。
ということで、現在の電力量料金、燃料費調整額、値上申請分とにわけて書き直してものが右の図です。ここで比べるべきは現行の電力量料金と新しい電力量料金ですからそれを計算したのがグラフの下の表です。現在の電力量料金からはそれぞれ5.13円に9.83円を足した14.96円の値上げになるわけですから、第1段階の料金ではなんと75.3%の値上げになります。実質はとんでもない大幅な値上になるわけです。
もちろん、現時点では電力量料金に燃料費調整額が加算されて請求されているので実質は燃料費調整額を含めた金額で比較してもよいとは思いますが、消費者に分かりやすい説明を心がけるべきであると思います。
そして激変するのは燃料費調整額です。思わず目を疑いました。
これまでの燃料費調整額基準価格は44200円でしたが、新しい基準価格はその2倍以上の94200円です。そしてこの背景には急激な燃料費高騰があるとしています。現在の基準価格は平成24年1~3月の貿易統計額の平均ですので、すでに10年前になっています。この間最新鋭(東京電力の表現)の石炭火力を多く導入した結果、燃料費に占める石炭の割合が高くなり、LNGや原油の割合が減ったと説明されています。本来なら基準価格が下がっても良さようなところですが、そうとはならず、大幅な基準価格の増加になっています。この背景はもちろん最近の燃料費高騰で、左下のグラフに高騰ぶりが示されています。確かに急激な高騰です。そしてグラフの数値は2022年の4月から11月の8カ月の平均になっています。
しかし私が理解できなかったのは、このグラフに示された最新の燃料価格を使って計算しても94200円にはなりません。計算結果は81467円でした。この94200円はどうやって計算したのでしょうか? またこのグラフはなぜ2015年から始まっているか気になったので調べてみたらその直前の2014年までは燃料価格が高い時期でした。同じ新電力ネットからグラフを引用します。
新電力ネットについて|新電力ネット (pps-net.org)
赤い枠で囲った部分は2015年~直近までの推移です。その赤枠の左隣りの部分はいずれも高い数値になっています。2010年頃からグラフを描き始めたら少しグラフの印象が違ったものになるかもしれません。
下の図は昨日もご紹介した新電力ネットの通関統計におけるエネルギー価格の推移です。すでにLNGも原油も価格は下降に転じています。円安も円高方向に転じていることから、今後もこうしたエネルギー価格が高騰を続けることはあるのでしょうか?一挙に二倍以上という大きな基準価格の設定はこうした状況と整合性があるのか?という気がしてきます。
さらに疑問はもうひとつあります。それは新しい基準価格が適用されたとして、平成24年レベルの燃料費レベルに戻ったとき、つまり燃料費が50000円下がった時にいくら減額してもらえるかということです。計算してみると9.15円になります。これは基準単価が0.232から0.183に減額されたからです。燃料費が昔のレベルに戻っても電気料金は昔よりも5円以上高いということです。何となく釈然としません。
今回の値上げ申請の理由は、燃料費高騰のはずです。申請値上げ額の妥当性、すなわち燃料費推移との整合性をきちんと説明していただきたいと思います。