かんとこうブログ
2023.02.27
業況観測アンケートと塗料製造業実態調査における需要分野別売上金額対比
塗料全体の需要動向もさることながら、需要別動向も塗料製造業にとっては非常に関心の高い事項であることは想像に難くありません。しかしながら、この需要分野別需要動向に関する調査データは二つしか存在しません。いずれも日塗工が行っている調査ですが、ひとつは毎月の業況観測アンケートにある需要分野別販売金額の前年同期比%のデータであり、もうひとつは塗料製造業実態調査の需要分野別製造数量、販売金額のデータです。このうち後者については、回答会社数も多く、精度の高い統計数値が得られる反面、当該年度が3月に終了してから調査が行われ、その年の11月に結果が公表されますので、当該年度が終わって半年以上経過して結果が判明することになります。
他方、業況観測アンケートについては当該月の前年同月比%がその翌月の中旬に発表されますので、非常にタイムリーでな情報を提供してもらえるのですが、回答社数が31社と業務実態調査に比べると少なく、指標が販売金額の前年同月比%だけなので情報としては足りない部分もあると言わざるを得ません。前年同月比という指標は、平時の指標であって、コロナ禍やリーマンショック時などの大きな変化があるときには、平年(例年)と比較してどの程度の水準かということがわかりにくくなります。
このため、これまでいろいろと指標を変換したりして検討してきましたが、この業況観測アンケートの需要分野別前年同月比を有効な指標として活用する方法が見つかりませんでした。今回、日塗工が行っている需要分野別動向に関する二つの調査結果を比較対比することで、少なくとも年単位での動向については、両者の結果がある程度一致することが確認できました。業況観測アンケートの需要分野別動向の年平均値は、当該年度終了後半月ほどで判明しますので、塗料製造業実態調査の結果よりも半年以上早く需要分野別動向の情報が得られることになります。以下に実際のデータをもとにご説明します。
今回比較した塗料製造業実態調査のデータ(回答会社全社の需要別売上金額の合計)と業況観測アンケート四半期報の需要別販売金額前年同期比の年平均データを下表に示します。
このままでは比較ができませんので、上の表の数値をすべて前年比に計算しなおして、各分野別に下の表の数値と比較したのが下図です。2015年を100とした指数で比較しています。
ざっと見ていただいて、木工とトラフィックペイントを除き二つの調査結果がおおよそ一致していると言っても良いのではないかと思います。本当は四半期毎の数値でも比較したいのですが、塗料製造業実態調査の方は年間データしかありませんので、あきらめざるを得ません。
これだけでも収穫なのですが、さらには、業況観測アンケートの需要分野別の年平均値を掛け合わせていったもの(例えば、2021年度のデータは、2016年から2021年度までの前年比をすべて掛け合わせたもの)が、実際の販売金額のデータである塗料製造業実態調査の販売金額の動向と一致するのかという点も気になります。理論的には毎年の前年比がすべて一致していれば、それらを毎年掛け合わせていっても一致するはずです。
結果は、先ほどの各年の前年比ほどには両者が一致しませんが、やはり木工とトラフィック以外はそこそこ一致しているとみてもよいのではないかと思います。つまり基準とした2015年から見て、どの程度の水準なのかということがおおよそ正しい位置に示されているということです。
木工とトラフィックが、さほど一致しない原因については、市場のサイズが小さく製造している会社数が少ないことが要因ではないかと想像しますが、詳細まではわかりません。
2月21日のブログで、業況観測アンケートの需要分野別の前年同月比について12か月の平均をとれば、需要別販売金額と一致することを示しました。毎月の業況観測アンケートでは、建築外装、自動車、船舶構造物、電機・機械・金属・木工の5分野しかデータが提供されませんが、四半期報ではさらに需要分野が細分化され、3分野が追加されますので、情報的には四半期報から年平均を計算した方が多くの情報が得られます。今後は四半期報告書の需要分野別にも注意して見ていきたいと思います。