かんとこうブログ
2023.03.08
法人企業統計調査について・・その2
昨日に引き続き財務省の「法人企業統計調査」について書きます。今日は業種別の売上高、営業利益、営業利益率についてご紹介します。この調査の対象は全国90万社に上っていますので、企業数で言えば全企業の20%以上、売上金額的に言えばかなりの部分を占めているはずなので、この業種別動向についての統計数値は意味があるものと思われます。それでは早速売上高、営業利益、営業利益率についての全体の様子を見てみたいと思います。
この統計では製造業と非製造業に分けて集計されていますが、その比率は売上高で製造業:非製造業≒1:2.5であり、営業利益では製造業:非製造業≒1.2.2となっています。従って全体の数値はどうしても非製造業の方に引っ張られてしまうのは仕方のないことかもしれません。ともあれ最近の5四半期の動向としては上記のグラフのようになります。製造業は、売上高、営業利益、営業利益率において非製造業よりも安定して推移しており、売上高が横ばい、営業利益はやや上向き傾向、営業利益率はやや下向き傾向となっています。
一方非製造業は、売上高も営業利益も変動があり、したがって営業利益率も変動しています。2022年では第2四半期(7~9月)に営業利益が落ち込み、第3四半期で回復しました。製造業よりも母集団が大きいために、全体も非製造業と連動して動いています。とここまでは、特に目新しい情報ではないかもしれませんが、これからご紹介する業種別の売上高、営業利益、営業利益率の推移は、ここまで発表されていない情報になります。昨日も書きましたが、日銀短観などで発表されるのは業種別の景況感(DI)であり、具体的な売上高や営業利益の数値ではありません。
ここで提示されている業種別の区分は上のグラフの下にかいてある業種、製造業では 食料品、化学、石油・石炭、鉄鋼、金属製品、汎用機械、生産用機械、業務用機械、電気機械、情報通信機械、輸送用機械、非製造業では建設業、卸売・小売、不動産業、物品賃貸、情報通信、運輸・郵便、電気業、サービス業です。それでは各業種別の売上高推移からご紹介します。
全体としてこの5四半期を見ると回復傾向にある業種が多いと見て取れます。グラフのうち売上高推移1から4までは製造業、5以降は非製造業です。グラフエリアの地の色が異なっているのは縦軸のスケールが異なるものを示しています。売上高1~4については縦軸の縮尺も位置もあわせていますので、折れ線の位置が売上高の絶対値になっています。
非製造業で最大の業種である卸売・小売については、2022年度前半は低迷しましたが第3四半期には回復を見せており、売上高だけもを見るとそうそう懸念されるようなところは見当たりません。しかし営業利益となると様相は一変します。
ここでも先ほどと同様、グラフの地の色が同じグラフの縦軸のスケールは同じで、営業利益1~4までは高さもそろえていますので、横線の位置が営業利益の絶対値と一致しますので、これらのグラフ間では直接比較ができます。
営業利益はさきほどの売上高とは違い、かなりのアップ&ダウンを見せており、営業利益段階で赤字の業種が見られます。製造業では唯一営業利益が赤字となったのは石炭・石油業ですが、輸送用機械(自動車など)でも営業利益がゼロ付近まで落ち込んだ時期があったことがわかります。また直近の第3四半期の動向では情報通信機械が大きく下降しているのが気になります。
非製造業では何と言っても電気業(電力会社等)が5四半期連続で営業利益が赤字であることが目を引きます。第3四半期の動向では、サービス業の営業利益が低下していることが気にかかります。一時赤字に転落した運輸・郵便は回復基調にあります。
最後に営業利益率について同様に見てみます。
ここでは。上段と下段で縦軸のスケールと位置を合わせていますので、上段どうし、下段どうしは直接に比較できます。比較的営業利益率の変動が少ない業種としては、製造業では化学、電気機械、業務用機械、鉄鋼、汎用機械、金属製品、情報通信機械、食料品が、非製造業では不動産業、情報通信、物品賃貸、サービス業、建設業、卸売・小売業が挙げられます。逆に変動が大きかった業種は輸送用機械、石炭・石油、運輸・郵便、電気業などエネルギーや半導体などの入手困難性が影響していると考えられます。
こうしてみるとなかなか市場解析に役立つ情報のようにも見えますが、惜しむらくはデータが発表になるのが当該四半期が終了してから3か月後であることです。90万社のデータを収集するわけですから時間がかかるのは仕方がないのかもいしれませんが、今の時代もっとスピーディな情報処理ができないものかと思ったりもします。