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かんとこうブログ

2023.03.27

IPCC 第6次評価報告書・統合報告書に書かれていたこと

先週気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第6次評価報告書・統合報告書を発表しました。温暖化に対して目標としている1.5℃の実現に対し2030年頃には排出量が許容量に達してしまうという内容で新聞各紙にも掲載されていました。もう少し詳しい内容を知りたいと思い、オリジナルの報告書(下記URL)を調べてみましたので、その内容をご紹介します。

https://report.ipcc.ch/ar6syr/pdf/IPCC_AR6_SYR_SPM.pdf 

  

報告書は英文で28ページありほとんど文字でしたので、要約部分のみご紹介します。この要約部分は環境省のホームページに和訳(下記URL)が掲載されていましたが、それでもかなりの枚数になりましたので、そこからさらに要約して以下に示します。字の色を変えたところが重要と思われる箇所です。内容は A,現状と傾向、B.長期的な気候変動、リスク、対応、C.短期的な対応 の3部に別れています。

https://www.env.go.jp/content/000121451.pdf 

  

   

Aの現状と傾向では、2021までに実施されている対策を基に算出すると、2030年時点の排出量ですでに温暖化1.5℃の許容値を上回りそうであり、さらに温暖化を2.0℃に抑制することも困難になりそうであるということが最も重要な結論です。このため、Bの長期的な気候変動、リスク、対応では、今からの10年の対応が非常に重要であり、あらゆる部門で急激かつ大幅な排出削減を行うことが必要だとしています。それが達成できれば排出量正味ゼロは2050年~2070年の期間に達成可能としています。

  

以上のことを端的に表す図がありましたのでご紹介しておきます。

   

   

上図において赤い線はすでに実施されている政策を基にした排出量の予測線ですが、2100年では温暖化が3.2℃と予測されています。もちろんこれでは目標である1.5℃は達成できません。一方青線と緑線はそれぞれ温暖化1.5℃、2.0℃の予測線ですが、現在からすぐに排出量が大幅に下降に転じる線となっています。これが即ち直ちに対策を取らなければ目標達成は難しいと主張する根拠となります。

報告書の最後のCの部分は以下になりますが、C2~C6までは抽象的な文章が続き、具体的な行動指針のようなものが書かれていないので省略しています。

本当に抽象的な文言が並んでいるのですが、赤字部分は衝撃的です。この10年こそが大事であり、その成否が数千年先まで影響を与えると書かれています。まさにこの10年が正念場ということになります。以上が報告書の概要です。この内容ですと、新聞各紙も具体的な事柄を書くのは難しかったので、ああした記事になったのではないかと思います。

温暖化のリスクを理解する上で参考になると思われる図表をご紹介して終わりたいと思います。

地球温暖化については、いくつかのシナリオが用意されており、代表的な経路が想定されています。その代表として温暖化が1.5℃、2℃、3℃、4℃の場合に気候にどのような影響がでるかということを示したもので、上から①年間で最も暑い日の温度が何度あがるのか ②土壌中の水分量がどの程度増減するか ③年間降水量がどの程度増減するかを表しています。

①の最も暑い日の温度は、平均気温の上昇幅の1.5倍は高くなると言われており。温暖化4℃の場合には7℃もあがると予想されています。 ②と③の土壌中の水分量と年間降水量は地域により増減し二極化していくようです。降水量で言えば干ばつと洪水のリスクが増大することになります。

次の図は、生物種や食料に与える影響です。

動物については温暖化4℃の場合、一部地域では半数以上の種が絶滅、水生植物については赤赤道付近でほぼ全ての種が絶滅と予測されます。また温度湿度条件が人間に対して死に至るまでのリスクとなる状態の日が年間何日あるかを表しており、温暖化4℃のシナリオでは赤道地帯では、ほとんど年中そうした温度湿度条件になることを示しています。

さらに食料生産では、可食植物生産量、漁獲高ともに気温の上昇とともに大幅減産にいたることが予測されています。

こうしてみてくると温室効果ガス排出量の削減が喫緊の課題であることは間違いありません。本報告書が主張する通り、この10年の行動が数千年先まで影響するとすれば、まさに眦(まなじり)を決して取り組む必要があるのではないかと思います。

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