かんとこうブログ
2023.05.16
G7参加国のエネルギー供給源・・IEAの統計からその1
今週の金曜日からG7首脳会議が広島で開催されます。今回の議題でも環境問題、とりわけ二酸化炭素排出抑制は主要議題の一つになると思われますが、今日と明日の2日間にわたりG7首脳会議参加国のエネルギー事情をご紹介したいと思います。データはIEA(世界エネルギー機関)が公開している2021年までのデータ(下記リンク先)を引用します。今日は電力関係、明日は電力に燃料も含めた全エネルギーの供給源についてデータをご紹介したいと思います。
Energy Statistics Data Browser – Data Tools - IEA
最初に各国がどのようにして発電しているかの推移を示します。2020年までは5年毎で、2021年が最新値として表示されています。主要なエネルギー源は図中に書き入れてあります。
各国とも下から3つめまでが、石炭、石油、天然ガスの化石燃料による発電量、バイオ燃料をはさんで原子力、水力という順に続きます。日本は、東日本大震災までは、原子力の割合が20%以上ありましたが、東日本大震災によってそのほとんどが停止したため、一挙に天然ガスや石炭の量が増えました。この大震災が他の国にはない要因として日本の発電における化石燃料の割合に大きく影響を与えています。
アメリカは震災前の日本とよく似た発電構成になっています。このところ、石炭が減り、天然ガスが増えていますが、これは発電効率と二酸化炭素排出削減の観点からのようです。ドイツは、石炭と原子力が減少し、風力が大きく増えました。
イギリスにおいては石炭が著しく減少し、風力やバイオ燃料といった再生可能エネルギーの増加が顕著です。フランスはよく知られているように原子力発電大国であり、発電量のほとんどを非二酸化炭素排出エネルギーで賄っています。
イタリアでは、石炭・石油が激減し、天然ガス、太陽光、風力が増加しています。カナダではもともと水力発電大国でしたが、石炭は大幅に減少し、天然ガスと風力が増えています。
こうしてみると各国とも化石エネルギー、とりわけ石炭の削減には注力をしており、一方で再生可能エネルギーへの転換を進めていることがわかります。一方で日本は、2011年の東日本大震災によって原子力発電がほぼなくなり、代替エネルギーに苦慮している状況です。このことは、発電料に占める化石燃料の割合、再生可能エネルギーの割合の推移を見ればより明確に理解されます。
2021年における各国の発電量における化石燃料起源の割合で、G7中最も高いのが日本です。赤線で示した日本は2010年から2015年にかけて、化石燃料使用量が一挙に増加しました。一方で他の国はこの間も化石燃料の割合を減少し続けており、2021年時点ではかなり差がついているように見えます。
一方で再生可能エネルギーの割合においても、残念ながらアメリカと並んで最下位グループです。フランスも再生可能エネルギー割合では低いのですが、二酸化炭素を出さない原子力発電の割合が高いために環境面からの圧力は受けにくくなっているようです。
さらに各国が電力量そのものや、化石燃料起源の電力をどのくらい削減してきたかについて、2005年と2021年の比率で見てみたいと思います。
電力量そのものは、むしろ増加している国もありますが、化石燃料起源の電力量は日本を除き一様に減少しています。特にイギリスは半減以下にまで削減しています。日本の場合には東日本大震災という特別な要因による影響が大きいとは理解しつつも少し残念な気持ちにはなります。
最後にひとりあたりの2021年における電力使用量の図を示します。これも国によって大きな差がありますが、気候要因の影響(特に寒い国の暖房要因)も大きいため、あくまで参考にしかなりません。最終的には電力量ではなく、二酸化炭素排出量で評価されるべきだとは思います。
これらのデータをもって、日本の努力が足りないなどというつもりはありません。申し上げたいのは、こうしたデータから、世界からどうみられるかということは意識しておくべきではないかと思います。明日は、似たような感じのデータになりますが、電力を含む全エネルギーのデータについてご紹介したいと思います。