お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2023.06.20

IEAの月次電力統計(2023年3月分)

IEA(International Energy Agency)から月次電力統計が発表になったとメールがきました(登録しておくと毎月メールが届きます)。OECDを中心として世界の主要国の発電状況について、毎月の集計結果を見ることができます。今日はこの結果を紹介し、世界の発電事情についての理解を深めていただければと思います。元のデータ化下記URLからご覧になれます。

https://www.iea.org/data-and-statistics/data-tools/monthly-electricity-statistics 

G7とG7以外の中で比較的影響が大きいと思われる国の発電事情についてご紹介したいと思います。

2023年の発電量(単位:TWh:10^12Wh)とそれを一人あたりに換算したものを下図に示します。

発電量の方は、縦軸が対数目盛になっています。対数目盛にしたのは中国とアメリカの2か国が突出して、他の国の大きさがわかりにくいためです。発電量を左右する主要因は、①国民の数、②気候、③電化製品の普及度、などになります。国別で見た時のトップが中国である理由は①国民の数であり、一人当たりの3月の発電量のトップがカナダであるのは②と③によるものと推定されます。とここまでは、特に「こんなものか?」で流していただいてよいのですが、ここから先がすこしずつ「これでよいのか?」という気持ちになっていってもらいます。

続いてご覧にいれるのは、3月の発電量の前年同月比%と同じく1-3月の累積発電量の前年比%(いずれも下図)です。

3月単月の場合も、1-3月累積の場合も傾向は一緒です。G7と韓国は前年比が微増かマイナスであるのに対し、それ以外の国(中国、インド、ブラジル、オーストラリア)は発電量が増加しているのです。これも決して目新しいことではないかもしれませんが、気になるのはその発電量です。

3月の発電量、G7の合計は608TWhでした。さらにOECD全体の発電量は888TWhでした。一方OECDに加盟していない中国は単独で727TWhを発電しています。ここに同じくOECDに加盟していないインドの発電量を合計すると871TWhとなり、OECDの発電量に匹敵ます。別な言い方をすれば、中国だけでG7全体の発電量を上回り、中国とインドを合計するとOECD全体の発電量に匹敵ということになります。

で、そのことのどこか問題かということをこれから説明します。上の2つのグラフからG7など世界の主要国の発電量は年々減少する傾向にあります。これは言うまでもなく、2050年のカーボンニュートラルを見据えた努力の結果です。一方で途上国、中進国の発電量は増加する傾向にあり、これは国の発展に伴って増加するものでありある程度仕方ないものだと思っていました。しかし先の中国とインドの発電量の合計がOECD全体に匹敵するとなるとそれほど悠長に構えてよいのかという気がします。ただし、発電量=CO2排出量ではありませんので、発電量の中で再生可能発電量の割合を考慮する必要があります。IEAの統計にはもちろん、再生可能エネルギーのデータもあります。3月の再生可能発電の割合%とその前年同月比%を下図に示します。

再生可能発電の割合は、国によって大きく違います。ブラジルのように豊富な水力のおかげで93.4%も再生可能な発電で賄っている国もあるのです。しかし、一方で人口の多い中国とインドでは再生可能発電の割合はまだまだ低いのです。1-3月の累積発電量とその前年比、1-3月の再生可能発電量とその前年比から、前年同期の累積発電量と再生可能発電量を計算できますので、ここから再生可能ではない発電量(非再生可能発電量)について前年からの増減を計算することができます。(下表)

この表ではOECD全体と中国+インドの合計で計算してみました。OECD全体では、1-3月の累積値で非再生可能発電が93TWh減少しましたが、中国+インドでは58TWh増加し、OECD+中国+インドでは35TWhの減少に留まってしまうことがわかりました。中国は、カーボンニュートラルの最終目標を2060年においており、2030年までは排出量がむしろ増加であり、削減はそれ以降としています。

一方で、IPCC(気候変動のための政府間パネル)からは、今から2030年までの数年間が非常に重要であり、この時期にこれまで以上の削減を実行できなければ、21世紀末に気温を目標とする1.5℃以内の増加に抑制することはできないとの見解が示されています。

人口大国の中国とインドの発電量は予想以上に大きく、かつ全体の発電量にしめる非再生可能発電の増減にも大きな影響を及ぼすことがわかりました。米中の覇権争いが顕在化していますが、非再生可能発電についての中国への働きかけはできないものなのでしょうか?この数字をみていてそのことが歯がゆく思えます。

コメント

コメントフォーム

To top