かんとこうブログ
2023.06.30
前年同期比は全てプラスになりましたが・・国内自動車8社の5月生産台数
昨日国内自動車メーカー8社から、一斉に5月の生産台数と6月の販売台数の発表がありました。それに対する報道各社の見出しは以下のようになっています。
いずれも前年同期比がすべてプラスとなり、これまで苦しんでいた半導体不足から脱出できたことを伝えています。確かに前年同期比で見ればその通りなのですが、果たしてコロナ前に戻っているのかという点がどうにも気になるところです。例月のように、さまざまな角度からデータを眺めてみたいと思います。
前年同期比と前々年同期比のグラフから示します。いずれも各社発表の数字を手元集計しグラフ化したものです。
左が前年同期比、右が前々年同期比です。前年同期比はすべての会社が国内生産・世界生産ともにプラスでしたが、前々年同期比では、すべてがプラスというわけにはいきませんでした。実のところ昨年は、長引く部品不足によってかなり生産が抑制されていましたので、個人的には前年同期比がプラスというだけで喜べない気がしています。
もうひとつの回復の尺度としては、コロナ前にもどったのかどうかという見方をすべきかと思います。生産台数は月ごとに結構変動するので、本来は月ごとの推移を過去何年かにわたって調べないといけないのですが、そこまで手がまわらないので、例月のように、過去4年間の月平均台数とこの5月の生産台数を比較してみました。
左が国内生産台数、右が世界生産台数で、この5月の生産台数を黒い横点線で示しています。実のところ国内生産でみると、5月の生産台数がコロナ前である2019年に月平均を上回っている会社はひとつもありません。世界生産では、確かにトヨタ、スズキは2019年の月平均生産台数を上回っていますが、それ以外の会社は2019年の月平均に及んでいません。5月は大型連休があるので、生産台数が他の月よりも少ない傾向にあるとは思いますので、軽々に断定はできませんが、どうも全般的には、コロナ前まで戻っていないと判断すべきではないかと思います。
最後に各社の生産台数の推移について過去29カ月間の推移を示します。グラフ中の横点線は過去4年間の月平均生産台数を示しています。コロナ前の2019年は紺色の点線です。
トヨタはかなり回復しているものの、国内はコロナ前まであと一歩、日産も国内はコロナ前に及ばす、世界生産は過去3年間と同じようなレベル、ホンダは、国内・世界ともコロナ前を大きく下回っています。
スバルはかなりコロナ前近くまできていますが、マツダはこの2カ月で台数を落としています。三菱も国内・世界ともコロナ前は遠い状態です。
ダイハツはここへきて生産台数が減少しました。スズキはコロナ禍においても落込みが少なかったのですが、現時点でも、国内世界ともコロナ前の水準近くをキープしています。
長きにわたったコロナ禍と部品不足の窮乏から、自動車の生産が抜け出しつつあることは確かだと思いますが、気になるところはその着地点の位置であり、果たしてコロナ前まで回復するのかどうか、なのです。