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かんとこうブログ

2023.08.29

GDPはコロナ前に回復したと言えるのか?

8月15日に内閣府から2023年4-6月のGDPが発表されました。3四半期連続でプラスであり、かつ金額がコロナ前を超える史上最高額であったため、報道各社は概ね好況を伝える見出しをつけていたようでした。

各社の見出しをいくつか紹介します。

好況感をもたらしているのは年率換算の対前期比が6.0%と大きいことと実額が過去最高であることが要因のようです。ただし、GDPの内訳をみると必ずしも総じて良かったわけではなく、肝心の個人消費がマイナスであることに懸念を表明する見出しもありました。項目別対前期増減率をNHKのサイトから引用して示します。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230815/k10014163391000.html 

私はこうした図を見ると反射的にコロナ以前に戻っているかどうかが判断できないと思ってしまいます。これを調べるのは簡単で内閣府の資料で実額のデータで見ればわかります。消費面から見たGDPとその主要項目の実額を下に示します。

データは1994年から載っていましたので全データをグラフ化してみました。左上のGDP全体ば確かに過去最高額になっていることがわかります。右上の民間消費は、全体の6割を占める大変重要な項目ですが、これは明らかにコロナ前の水準には届いていません。一方左下の民間設備投資については過去最高額になっており、右下の政府最終支出は1994年以来ずっと増加の一途ですので、もちろん今回も過去最高になっています。ということで、全体としては、コロナ前に回復しましたが、肝心の民間消費のみがコロナ前までに回復していないという状況となっています。

今回もう一つ試してみたことがあります。毎回のように対前期比だけでは大局的な動向がわかりにくい、その一方、こうした対前期比をずっと掛け合わせたもの(累積値)は、理論的には常に基準時点からの増減を定量的に表していると主張してきました。これを実証してみていと思います。

GDP各項目の対前期比を1994年から2023年までずっとかけあわせて推移を表したのが下図です。縦軸は、1994年1-3月=100とした時の%で表しております。この%に1994年1-3月期の実額を掛ければ、その時点の実額となります。

この4つのグラフと先の実額の4つのグラフを比較してみてください。すべてのグラフで細かな推移が見事に一致していることがわかると思います。縦軸の目盛りを4つのグラフで合わせていますので、各項目についての1994年からの相対的な推移の大きさが容易に理解できると思います。じっとこれらのグラフを眺めていると、2008年のリーマンショックや2020年からのコロナ禍は個人消費や民間設備投資に大きな落ち込みを与え、それを政府最終支出が懸命に支えているという状況も合わせて理解できるのではないかと思います。

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