かんとこうブログ
2023.09.26
塗料は勝ち組か?負け組か?・・昨日の続き
昨日の続きです。昨日は,より実際の需要に近いと思われる「純出荷」で見れば、数量、金額とも減少傾向にあること、一方で「出荷」と「純出荷」の差が拡大しているため、「出荷」で増加、「純出荷」で減少する塗料種があり、その原因は「同業者向け出荷」が年々増加していることであることをご紹介しました。
今日は、そうしたことを踏まえ、塗料は勝ち組か?負け組か?という話になります。
これを判断するためには、毎年経産省が発表している旧工業統計表(現在は産業構造実態調査)で出荷金額と付加価値金額を調べて業界ごとに比較するしかありません。代表的な業種および塗料の使用先と思われる業種を選定して作図しました。これも1年毎のデータを引っ張ってきて作表し作図しなければなりませんので結構手間がかかりましたが、出荷金額の推移は以下のようになりました。
業種によって推移の状況はさまざまですが、このまま見れば塗料もそこそこ頑張っているのではないかということになります・・・しかし、冒頭述べたように「出荷」「純出荷」のデータでは金額も減少傾向だったはずです。しかし、この統計では塗料の出荷金額が明らかに増加しています。この「なぜか」は少し置いておいて、付加価値金額の推移の図を見てみましょう。付加価値金額とは、ほぼ「出荷金額から原材料費を差し引いたもの」です。
大筋で付加価値金額も出荷金額と似たような推移となりました。塗料の付加価値金額も増加傾向にあります。ならば安心かと言えば残念ながらそうではありません。ここで使用されている出荷金額、付加価値金額はどう考えても我々が日ごろ目にしている数値よりはるかに大きな数字になっています。昨日の生産動態統計調査(確報)の出荷金額と本日の旧工業統計表の出荷金額の差異は縦軸目盛りをみれば明らかです。昨日の「出荷」金額は5000~6000億程度でしたが本日の旧工業統計表の出荷金額は1兆円を超えており、想像以上の差異があります。それぞれも調査統計の対象がよくわからないので、想像の域をでませんが、我々が考えている「塗料」よりも広範囲のものを「塗料」として調査の対象に含めていることが考えられます。調査の細目には、塗料製造業以外にプラスチック製造業、有機薬品製造業、表面処理・洗浄剤製造業などの業種からもデータを収集していると書かれています。ここについては、明日調べた結果をご紹介しますが、旧工業統計表(現産業構造実態調査)と生産実態統計調査(確報)では塗料出荷金額の数字が大きく異なるということだけは記憶しておいてください。
従って、塗料製造は勝ち組か、負け組かという問いに対する答えは、「表面上は勝ち組に見えるが、実際はそうではない。負け組とはいかないまでも、勝ち組とは言えない。」というところでしょうか?
最後にもうひとつ別な付加価値金額のデータをご紹介します。それはGDP(生産側)のデータです。通常報道されるGDPは消費側のデータですが、消費側と同じように生産側についても産業ごとの価値創造金額が計算されています。これは旧工業統計表の付加価値金額と同じく、出荷金額から原材料費などを差し引いたものと説明されています。これは四半期毎の時系列データがありますので簡単にグラフ化できました。ただし、塗料製造業などという細目のデータはありません。それぞれの業種がどのような状況なのかを知るうえでは参考になるデータと思います。
赤丸をつけたのは塗料の使用先と思われる業界です。塗料に関するデータはありませんが、塗料の純出荷金額から類推すれば純出荷ベースの付加価値金額も増加傾向とは思えません。純出荷の数量、金額が減少傾向であるということはいずれにしても心配なことです。
各種統計結果から、塗料の出荷金額はコロナ禍前に戻ったという認識ではおりますが、一方で長期減少傾向からは脱しきれていないと認識しています。