かんとこうブログ
2023.09.27
さらに昨日の続き・・統計間の差について
一昨日は、経産省の生産動態統計調査(確報)の数値について同業者向け出荷を差し引いた純出荷との差についてご紹介しました。また昨日は、この確報の数値と旧工業統計表(現経済構造実態調査)の塗料の出荷金額が大きく異なることをご紹介しました。今日はこの統計間の差異について調べたことをご紹介します。
確報における「出荷」と「純出荷」のように、両統計数値の推移を同じグラフで比較しました。純出荷もあわせ3つの数値の推移を比較してみました。
この図を見て一番問題と感じることは、旧工業統計表の出荷金額の推移は、この間において増加傾向にあるのに対し、生産動態統計調査(確報)の「出荷」も「純出荷」も減少傾向にあるということです。一次近似式によれば(R2乗値が小さいことの問題はとりあえず無視します)旧工業統計表の出荷金額では毎年48億円の増加であるのに対し、確報の「出荷」では毎年4億円減少、純出荷では毎年81億円減少するという結果になります。
さらに気になるのは旧工業統計表(現経済構造実態調査)の出荷金額と確報の差がどんどん広がっていくということです。これも図に示します。さらに細かく言えば、2022年(2021実績)から工業統計表から経済構造実態調査に変更になっていますが、2021年から2022年にかけて、両者の差が急拡大していることです。
2021年では両統計の差が5000億円にも達しています。これまで日塗工はじめ塗料業界では確報(生産動態統計調査)の数値を用いて、種々の報告を行ってきましたが、果たしてこれが正しいのかどうか検証する必要性を感じざるを得ません。手っ取り早くできることは、調査の対象が同じなのかどうかを調べることですので、旧工業統計表(現経済構造実態調査)の品目別調査より、どのような業界が「塗料」を出荷しているのか調べてみました。
左が平成18年(2006年)、右が令和4年(2021年)の出荷金額の業界別内訳です。これによれば、いずれの場合も塗料製造業がほぼ大半を占めており、平成18年で92.3%、令和4年で少し下がり88.8%でした。他の業界は結構多様な業界が塗料を製造しているものの、その量はさほど大きな量ではありませんでした。やはり塗料製造業が圧倒的に多く、かつ出荷金額は、確報(生産動態統計調査)よりもはるかに大きな数値であり、かつ確報の数値との差は広がる一方なのです。ますます調査対象が一致しているのかどうか、どこに差があるのか気になります。
もう少し調査対象について調べてみました。生産動態統計調査(確報)の方は法律にもとづいて昭和23年から調査が行われていますが、調査対象は産業ごとに決められており、塗料の場合は従業者10名以上が対象となっています。
一方で旧工業統計表(現経済構造実態調査)は基本的に従業員1名以上の全事業所となっており、従業員別の統計数値も掲載されています。先の生産動態統計調査(確報)が10人以上の事業所が対象ですので、1人~9人の事業所の割合が気になります。下表に塗料製造に関する最新の2021年のデータを示します。
1人~9人の事業所の出荷金額の割合は全体に対して2.2%、金額で言えば259億円に過ぎませんでした。とても5000億円もの差を説明できる数値ではありませんでした。となるとやはり根本的にどこかが違うということになります。
こうして調べてきましたが、生産動態統計調査(確報)と旧工業統計表(現経済構造実態調査)の出荷金額の差異については、その理由がわかりませんでした。しかし、冒頭述べたようにこれほどに差異があり、片や増加、方や減少ではどちらを信じてよいやらわからなくなります。ぜひともこれは解明する必要があります。