かんとこうブログ
2023.12.19
政党交付金収支報告書の中身
このところ、資金集めのためのパーティのキックバックを政治資金収支報告書に記載していなかった件について政界が大きく揺れ動いています。こうした話が出るたびに政党交付金があるにもかかわらずどうしてこのような裏金作りが絶えないのかと思ってしまうのですが、一方で政党交付金は一体どんな用途に使用されているのかが報じられることはありません。この政党交付金収支報告書は公表されていますので、誰でも内容を見ることができます。今日は2022年の各政党の政党交付金収支報告書から、各政党の収支と支出内訳についてご紹介したいと思います。
この政党交付金収支報告書は、今話題になっている政治資金収支報告書とは異なり、国から交付される政党交付金の収支に関する報告書であり、政党や個人が集めた政治資金の収支報告とは全く別なものです。裏金作りが報道されている中で、公的に交付されるお金がどのくらいあり、それを何に使っているのかを明らかにすることが裏金問題を考える上で参考になるのではと思いご紹介することにしました。
この政党交付金は、リクルート事件などを契機として設けれらた制度であり。一定数以上の国会議員が所属しているかか、あるいは一定数以上の得票率を得た政党に対し、総額で国民の数に250円をかけた金額が交付されるというものです。ざっと言えば年間300億円の政党交付金が税金から支払われているというものです。この金額をどう分配するかについては、総額の50%を国会議員数で比例配分し、残りの50%は得票率で比例配分するという方式になっています。受け取る権利がある政党の中で日本共産党はこの交付金を受け取っていません。
まず各党ごとの政党交付金の金額と各政党のシェアをご覧ください。
交付金の分配は得票率と議員数で按分されますので、当然議員数の多い政党が多く受け取っており、自民党が約半分、立憲民主党は2割強、日本維新の会と公明党が約1割といった金額になっています。
次に、この交付金をどれだけ支出したかについて下の一覧表をご覧ください。
この表はかなり単純化していますが、基本的な収支はこれで十分わかります。各党の収支を見ると、基本的にはもらった交付金をその年に使い切って、前年と同じ額の繰越金を残すというのが基本のようで。前年より明らかに繰り越し金を増やしたのはれいわ新撰組で、明らかに減らしたのが、公明党、立憲民主党、社会民主党でした。これは選挙の有り無しなどでも各年ごとに大きく変わるのではないかと思います。
それでは支出の費目ごとの金額を見ていきたいと思います。
各党の支出全体を100とした時の各費目の内訳を示しています。上から順に支部政党交付金、人件費、事務所費をグラフ化してみました。
政党交付金においては公明党が支出を計上していません。しかし一方で人件費と事務所関係費の割合はれいわ新撰組とともに突出していますので、支部関係の費用を本部が一括して処理している可能性があります。れいわ新撰組の場合には支部組織はそう大がかりではないと推定されます。ということでグラフの上の段の3つの費目を合計してみました。それが下段のグラフです。多少凸凹はありますが、そこそこそろってきました。日本維新の会は他の政党に比べてこうした支出が少なく、逆に社会民主党は多くなっていますが、これもそれぞれの党の歴史的経緯や現在の活動状況を考えると納得できるような気がします。
一方組織活動費から調査研究費は、政治活動に支出した費用ですが、これもグラフ化してみました。いずれも縦軸は支出全体に対する内訳%です。
これも各党かなりバラバラな結果になりました。組織活動費ではれいわ新撰組が、選挙活動費では国民民主党が、機関紙では社会民主党が、宣伝事業費では日本維新の会がそれぞれ突出しています。これは活動費をどう仕分けするかという考え方の違いのような気がします。そこでこれら5つの費目の合計内訳%をグラフ化してみました。(下段右)
このグラフはいわば、支部交付金+人件費+事務所関係費の合計のグラフの裏返しですので、こんどは日本維新の会が多く、社会民主党が少ないということになりました。結論としては、それぞれの党の事情で多少の差はあるが、政党交付金の使い方に大きな違いはないということになりました。
今問題になっているのは、政治資金収支報告書の方で、政党交付金収支報告書ではありませんが、自民党として約150億円もの交付金を受けて政治活動の助成を受けている以上、裏金作りと呼ばれる行為が横行していたことに対する責任は大変に思いものがあると言えます。政治資金の処理に不正があった場合には、ペナルティとして翌年の政党交付金減額あるいは停止という厳しい処分も必要なのではないかとも思います。