かんとこうブログ
2023.12.21
塗料の原材料はナフサにどれほど連動しているのか?
昨日ご紹介した経産省確報データによる原材料の価格動向ですが、これらがどれくらいナフサ価格と連動して推移しているのかを調べてみました。調べ方は、①ナフサの価格とそれぞれの原料価格の散布図を描いてR2乗値(決定係数または寄与率)を求める ②実際の価格推移をナフサの価格推移と比較する の二通りです。
それでは①のナフサの価格とそれぞれの原料価格の散布図からお見せしたいと思います。
価格がナフサと連動しているかどうかを判断するために、基準値としてナフサと原油価格の散布図を作成し、そのR2乗値から判断することにしました。R2乗値は直線回帰性を表しており、完全に直線状にすべての点がならぶと1.0になります。ナフサと原油価格の散布図におけるR2乗値は0.720でした。意外に低いのですが、一応これを基準にこの数値より高い場合は連動性あり、これよりも低いが0.5以上であればやや連動性ありとしてグラフにR2乗値を書き入れています。樹脂原料では、連動性の高いものが多く、唯一ビスフェノールAだけが連動性なしとなりました。
樹脂原料は連動性が高いものが多かったのに対し、(塗料用)樹脂では半分以上が連動性なしとなりました。ナフサ➡樹脂原料➡樹脂と価格変動が遅れてつたわるため単純な散布図では連動性が低くなることも考えられます。そこで後ほど実際の価格推移で比較してみたいと思います。
樹脂よりも意外であったのは、溶剤です。代表的な溶剤のうちトルエンとキシレン、イソプロピルアルコール以外はナフサとの連動性なしという結果でした。これもあとで実際の価格推移を比較する必要があります。
最後は顔料です。
ここでも意外な結果でした。酸化亜鉛の連動性が高いのです。連動性が高いと予測されたカーボンブラックはさほどでもありませんでした。やはりナフサとはある程度のタイムラグがあるため散布図の連動性が低くなるのでしょうか?
それでは今度は実際の価格の推移をナフサと比較してみます。
図中の数字は先ほどの散布図のR2乗値です。散布図では連動制が高いと判断されたものでも、実際の価格カーブはあまり似ていないようで、これらの中ではスチレンモノマーとアクリル酸エステルが最もナフサの価格変動に忠実に連動しているように見えます。ビスフェノールAはどう見ても連動はしていません。
樹脂について散布図のR2乗値からは連動性が低いとなりましたが、こうやって全体的に眺めてみると一様に右肩あがりで、それなりの連動性が感じられます。ナフサは急激に変動するのに対し、樹脂の価格はもっと長い周期で平準化して変動しているということなのかもしれません。
溶剤の中ではトルエンが最も連動性が高いように思われます。次いでキシレン、イソプロピルアルコール、エチレングリコールエーテルあたりも大筋で連動しているように思われます、ただし、メチルイソブチルケトン、ブタノールはナフサ以外の価格要因の影響が強いのではないかと思われます。
顔料の中では、酸化亜鉛のグラフの形がナフサに似ています。右肩上がりという点では、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタンも大筋で連動しています。アゾ顔料、フタロシアニン顔料では価格が他の原料よりもかなり高いためか勾配が小さすぎるようです。
全般にもう少しナフサ価格連動性が高いと予想していましたが、意外にも散布図のR2乗値は低い数値でした。ただ、傾向でみれば、大筋連動と言ってよい原料はたくさんあり、ナフサ価格の影響は大きいということになります。