お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2024.03.12

IEAの「二酸化炭素排出量2023」報告書 その1

先週、IEA(国際エネルギー機関)から「二酸化炭素排出量2023」報告書(下記URL)が公開されました。2023年の世界の二酸化炭素排出量に関しての報告書です。今日から3日間、この報告書の内容をご紹介していきたいと思います。

https://www.iea.org/reports/co2-emissions-in-2023

    

報告書の構成は第1章から第7章まで以下のようななかなか刺激的な標題が付いています。

  

   

第1章は要約です。報告書の概要を8つの文章に要約しています。お急ぎの方はこれだけ読めばおおよそのことは理解できるかもしれません。もっとよく理解したいという方は、とりあえずこれはスルーして次に進んでください。最後にこの要約については彩度表示してコメントしたいと思います。

   

  

一言だけコメントすると、この標題「過去最高を記録したが、トンネルの先に光はあるのか?」というタイトルは。まさにこの1行で報告書全体をよく表していると思います。

それでは第2章(2.0)に進み、2023年のCO2排出量が世界として増えたのか減ったのか?から見ていくことにします。

   

左図で示すようにの CO2 排出総量は 2023 年に 1.1% 増加しました。パリ協定で定められた世界的な気候変動目標を達成するために必要な急速な減少には程遠く2023 年には CO2 排出量は過去最高の 37.4 Gt に達しました。しかし、右図でみるように、2023年の増加率(右端のグレーの棒)は、ここ数十年の増加率に比べればそう大きなものではありません。

これから説明していくように将来への希望に繋がる動きも認められています。この報告書は、「結果のみでなく、排出量増加の背後にあるさまざまな要因を理解することで、エネルギー転換の進捗と見通しについての洞察が得られることを目的として2023 年の最新の排出傾向とその根底にあるエネルギー分野の推進要因の両方をタイムリーに分析したものです。」と書かれています。まずはさまざまな要因の影響を一つずつ見ていくことにします。

最初はクリーンエネルギーの躍進です。

このグラフは、10年毎のCO2排出増加率の年平均とGDP増加率の年平均を表しています。2020年代に入り、CO2排出は明らかに抑制されており、「過去10年間に見られた排出量増加は、第1次と第2次の 2 つのエネルギーショックによる大きな混乱と世界規模のマクロ経済ショックが見られた1970年代および1980年代に比べても小さなものになっています。」と解説されています。しかもこの抑制はGDPの抑制を伴わずに進行していることが重要であるとしています。

こうした近年のCO2抑制の主要因はクリーンエネルギーの導入であり、2019年から2023年において、太陽光、風力、原子力によるCO2排出量の削減効果は、化石燃料由来の他の発電による増加をほぼ相殺するほどに大きくなっています。より具体的には「風力発電と太陽光発電の世界的な容量増加は、2023 年に約 540 GW という記録に達し、2022 年比 で75% も増加しました。電気自動車の世界販売は約 1,400 万台に達し、2022 年比で 35% も増加した」とされています。

次に2023年の特殊要因について見ていきます。特殊要因とはこの1年だけに影響が限定され後年度に影響を残さない要因で、具体的には①気象要因 ②COVID19後の経済復興 ③世界特に先進国の工業生産 です。
  
   
それぞれ取り上げた要因のCO2排出量に対する影響は右表に示してありますが、気象要因の中では「暖冬」によるCO2排出削減効果が大きかったようです。温暖化の影響は「冷房」における増加と「暖房」における減少の両面がありますが、2023年では「暖房」における減少が「冷房」における増加を遥かに上回っています。それでは。次に気温の影響をさらに詳しく地域別にみていきます。
   
   
暖冬によるCO2排出量の減少効果が大きかったのは、米国、中国、ロシア、日本・韓国で、唯一中南米だけが冷房による増加が暖房による減少を上回りました。全体では120MtCO2の排出が減少しました。次は、気候変動により降水量が少なく水力発電が十分に行われなかった影響を示します。この水力不足による水力発電量の減少は下図のようになっています。
   
   
世界の水力発電容量は増加したにもかかわらず、主要な水力発電地域の干ばつにより、中国を筆頭に北米、インド、東南アジア、中南米は軒並みに水力発電量が減少し、唯一欧州の水力発電量だけが増加しました。
   
この他の2023年の単年度特殊要因について簡単に述べれば、COVID19後の経済復興で最も大きな増加要因となったのは、航空機燃料由来による増加でした。また世界の工業生産については、先進国の生産が比較的軟調であり、工業生産に伴い排出量は減少したと報告されています。
   
さて今日はここまでにします。 明日は第4章(4.0)、第5章(5.0)をご紹介します。

コメント

コメントフォーム

To top