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かんとこうブログ

2024.04.04

ワニの口はさらに開く・・日銀短観の製造業と非製造業

4月1日に日銀短観(令和6年3月調査分)が発表になりました。メディアの報道では主に大企業のDI値について、ダイハツの不正認証などの影響で大企業の製造業が4四半期ぶりに悪化したこと、反面非製造業は改善が継続ということなどが報じられたようです。今日は、日銀短観の中から大企業VS中小企業、製造業VS非製造業、中小企業各業種のコロナ禍前後でのDI値推移をご紹介したいと思います。

大企業と中小企業の差異について、1983年から2024年の40年余のDI値推移を示します。上が製造業、下が非製造業です。

製造業は、コロナ禍からの回復過程で広がった企業規模格差が縮まりかけたのですが、また少し広がりました。非製造業では、コロナ禍の落ち込みからの回復過程全般で景況感における企業規模格差が広がり続けています。

次に製造業と非製造業の対比です。2005年から2024年における大企業及び中小企業における製造業と非製造業の比較を下図に示します。

2005年から2024年における大きな経済停滞期間は2008年のリーマンショックと2020年からのコロナ禍です。こうした大きな停滞期のピーク(赤丸)においては企業の大小を問わず製造業の落ち込みが非製造業の落ち込みを上回っています。しかしながら、そうした停滞期のピークから回復していく過程においては、まず製造業の回復が先行し(青丸)しばらくして非製造業の回復が追い越していく(緑丸)という過程を両方のケースで辿っています

2024年3月期は、こうした過程における緑丸の部分であり、ワニの口が広がった(非製造業>製造業)状態と判断できます。とは言うものの、製造業のこの先3か月の見通しはこれまでの3か月よりもさらに悪化するという予想であり、さらにワニの口が広がる可能性が高いようです。ワニの口が閉じるまでにはまだ時間がかかるかもしれません。

業種別については、2018年から2024年までのDI値推移をグラフ化しました。図中の数字は2020年から2024年までの17四半期のDI値の平均値です。以下のグラフはすべて中小企業の業種別DI値の推移です。コロナ禍以降の全体的景況感を表す指数として見ていただければと思います。

製造業と非製造業では、非製造業の方がDI値の平均が高くなっており、その理由として製造業に比較して2020年の落ち込みの少なさ、回復の順調さが考えられます。

次に製造業業種別にDI値推移を示します。縦軸はすべて統一してありますので、見た目がそのままDI値の良悪となります。

化学と窯業・土石は似たような傾向です。20年の落ち込みは軽度でしたが、その後はなかなか水面上に出られません。石油・石炭製品は、大変特徴的な推移で、コロナ禍でもほとんど落ち込まず、しかしこの期間を通じてほぼ水面下でした。ウクライナや為替の問題が影響しているものと思われます。鉄鋼と非鉄金属は似た傾向となっています。コロナ禍前が好調でしたが、コロナ禍で大きく落ち込んだものの素早く回復してその後も水面上をキープしていました(ここへ来ておちこみ?)。

金属製品、機械(汎用、生産用、など)、電気機械は似通ったグラフとなりました。コロナ前好調でコロナで落ち込み、早めに水面上に出たものの、水面付近/水面下を推移という感じです。造船・重機もこれらと似ていますが、回復に時間が長くかかり水面下の時間が長い点が異なります。自動車は最もダイナミックにDI値が変動しています。コロナ禍前の好調さとコロナ禍の落ち込みの間の振れ幅は業種の中でも最大であり、2021年2022年の半導体不足などによる落ち込みも決して軽度ではありませんでした。その結果としてこの間の平均DI値は-12.1と製造業の業種別では最も悪い数値になっています。

さらに特筆すべきは、ここにあげた製造業全業種で、2020年から2024年の17四半期のDI値の平均がマイナスであったことです。

非製造業についてのDI値推移を下図に示します。

驚くべきことに建設はこの間で一度もDI値がマイナスになりませんでした。不動産もそれに近く水面下はわずか5四半期のみでした。これに対し小売は2018年から2022年までずっと水面下で、ようやく2023年になって水面下を脱しました。

運輸・郵便はコロナ禍からの回復に時間がかかり、2023年にようやく水面下を脱しています。情報通信は不動産とほぼ似たグラフで水面下の期間がわずか3四半期でした。宿泊、飲食は2020年から2022年まで最も低迷した業種となりました。2020年から2024年までのDI値の平均が-31.4と全業種の中で最も悪い数値を示しています。

こうした業種別にみていくと、それぞれの業種でかなり景況感が異なっていることがわかります。それぞれに事情があるものと思われますが、こうした統計データがきめ細かな政策に反映されることを期待したいところです。

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