お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2024.06.05

電力料金の補助打ち切り・・これまでの経緯

昨年2月以来続いていた政府による電力料金の激変緩和措置がこの6月で終了となるため、7月以降電気代が上ると報じられています。平均的な世帯ではいくら高くなるとかも紹介されていましたが、よくわからないので調べてみました。調べた結果、どうもこの政府補助金の終わり方はこずるいところがあるように思いました。きょうは燃料費の変動に伴って変化する燃料費調整額についてこれまでの経緯を含めご紹介していきたいと思います。

まずこの6月で終了する激変緩和措置の金額がいくらであったか?ですが、きわめて単純で2023年2月から9月までが7円/KWh、2023年10月から2024年5月までが3.5円/KWh、2024年6月が1.8円/Kwhです。(下図)

これを見て正直なんと姑息なと思いました。補助金打ち切りの直前の6月だけ補助額を下げておいて7月以降との差額を少なくみせようという意図があるのではないか?そうではないと主張されても信じられない気がしました。ということでやはり元に戻って2023年6月の料金改定でいくら上がったのか?から話を始めるべきと思いました。

2023年6月の電気料金の価格改定を資源エネルギー庁の資料で説明したいと思います。

この表は電力会社10社の標準的な家庭の電気代(使用料400KWh/月)について資源エネルギー庁がまとめたもので、上から2022年11月の電気代、値上申請額、査定結果(認可値上げ額)と続き、最終的な値上げ額が赤枠で囲んだ改定後という欄に記されています。この表が言いたいのは「電力会社から申請してきた値上をそのまま認めたのではなく、かなり削って値上を押さえました」と言うことのようです。なので、申請前(2022年11月)と改定後(2023年7月)の電気代についてグラフで比較してみました。しかしこれだと改定後の料金には激変緩和措置の補助金が含まれていますので、公平を期すため、補助金なしの金額も一緒に載せています。

2023年6月の価格改定については、電力10社すべてが値上を申請したのではなく、中部電力、関西電力、九州電力が申請をしていませんので、ここは重要なポイントになります。それを頭においてグラフを見ると次のことが言えます。

①確かに申請前と改定後を比較するとすべての電力会社で料金が下がっている ②しかしながら、補助金がなかったとして計算すると値上申請をしたすべての電力会社で改定後の料金が上がっている つまり補助金なしでは、この値上によって値上がりしているという当たり前のことがわかるのです。

毎月電気料金が変動するのは発電に使用される燃料(石油、天然ガス、石炭)の価格の変動に応じて調整が入るからであり、これを燃料費調整額と言います。これが家庭用電気料金でどのように変動したか下図に示します。

この図では2022年以降すべての会社で燃料費調整額が台地のように平らな線で頭打ちになっていることについての説明が必要でしょう。これは燃料費が高くなりすぎたため、調整が可能な額を超えてしまい調整が可能な金額の上限にはりついてしまっていることを示しています。つまり電力会社が燃料費の高騰を価格に転嫁できなくなっている状態です。

紺色が燃料費調整額(円/KWh)、赤線がそれに激変緩和措置の補助金を加えた(実際には差し引く)ものです。中部電力、関西電力、九州電力以外の会社は、2023年6月に値上げをしていますので、そこで断崖絶壁のように下落しています。しかしこれは安くなったのではなく、基準となる燃料費が上がったため燃料費調整費用がプラスからマイナスに転じたのです。

2023年6月の価格改定時に基準となる燃料価格も改訂されていますが、その金額を下表に示します。燃料費調整額は、この基準燃料費をもとに計算されています。

価格改定時に基準燃料価格は2倍以上の大幅上昇となった会社が多いことがわかります。23年6月までの実勢価格が基準価格に対して高すぎて調整できる上限を超えていた状態から、一挙に調整額がマイナス(実勢価格が基準価格を下回る状態)になったということです。

このように説明すると中部電力、関西電力、九州電力は、調整ができないほどの燃料高騰にも拘らず、なぜ値上しなかったのかと思われる方もいると思います。その理由は各社の電源構成比を見ると明らかになります。

この図は2022年における電力各社の電源構成比(どの発電方法でどのくらい発電しているかの割合)です。関西電力と九州電力に共通するのは原子力発電の割合が大きいことであることがわかります。下図は資源エネルギー庁による2024年1月現在稼働中の原子力発電の状況を示したものです。稼働している原子力発電装置は、関西電力が7基、九州電力が5基、四国電力が1基となっています。実質的に原子力発電は経営に寄与しているのは関西電力と九州電力の2社ということになります。

もう一度上述した2023年6月の価格改定前後の電力料金の比較をみてみましょう。(さきほどと同じ図です)

激変緩和措置の補助金なしの条件でも値上げをしなかった中部電力、関西電力、九州電力は申請前と改定後を比較しても値下がりしています。関西電力と九州電力については原子量発電の割合が高いことが燃料費の高騰による影響を緩和していると考えて良いと思います。中部電力については、その原因を電源構成に求めるとすれば天然ガスの比率が高いことにその理由があると思われます。(東京電力も中部電力と電源構成が似ていますが、それ以外の要因により電気料金が上がっているものと思われます)

最後に電力会社毎の2023年7月と2024年7月の燃料費調整額の比較を示します。2023年7月は補助金(7円/KWh)を含んだ額ですので、すべての電力会社で2024年7月の方が高くなっています。特に値上げ申請をしなかった関西電力と九州電力では7円まるごと上がることになります。今回の値上げに関して2024年6月と2024年7月を比較するのと、2023年7月と2024年7月を比較するのとでは大きく異なります。

いずれにせよ燃料費調整額の推移を見るときに基準燃料価格の変動は大変大きな要因です。今回の補助金打ち切りに関する報道では、単なる補助金だけの問題だけのように報道されていますが、2023年6月の電力料金の価格改定に遡っていろいろと分析すべきではないかと思う次第です。

コメント

コメントフォーム

To top