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かんとこうブログ

2024.06.06

なぜヒラメは左、カレイは右なのか?の学術的説明

一昨日のことです。当組合の60周年記念事業準備委員会(来年が関塗工60周年です)が終わったあとの私的懇親会で、E社の水産部員(自称であり実在していません)を中心に釣り談義に花が咲きました。話が、大きな魚➡マグロ➡おひょう➡カレイ➡ヒラメとうつり、カレイとヒラメの眼の話に移り、なぜヒラメは左でカレイは右なのかという話になりました。その場では誰からも正解らしきものが出なかったので、酔っていたこともあり私は「関塗工のブログで深堀りするぞ!」と宣言してしまいました。ということで今日はヒラメが左でカレイが右である理由について調べたことをご紹介します。世の中にはこうしたことをちゃんと研究している方がいらっしゃいました。

まず最初は、ヒラメやカレイの眼はどの時点で偏るのか?と言うことから説明します。修士および修士課程の若き科学者4名が運営しているサイト「サイエンスラジオ」(下記サイト)から引用させてもらいます。

ヒラメとカレイの左右の違いはどのように生じるのか? | サイエンスラジオ (science-radio.com)

ヒラメもカレイも稚魚になった段階では眼の偏りはありません稚魚から成長する過程で眼が偏ってきます。(下図)写真左側のFステージまでは眼の偏りが見られず、写真右側最上部のGステージと書かれた写真において初めて眼の偏りが確認できると説明されています。

通常生物の部位の左右の位置については誕生時には決定されているものですが、成長に従って変化するものもあり、ヒラメやカレイの場合には変態過程で左右の非対称性が発生しています。こうした魚類の非対称性に関する研究をされていた東北大学の鈴木教授が書かれたであろうと推測される文献から引用します。

この図から生後20~40日の段階で眼の移動だけでなく皮膚の色素形成(眼のない側では色素が形成されない)などが行われます。ここまでの過程でヒラメとカレイに大きな違いはありません

それでは、ヒラメとカレイの眼の付き方が違う原因は何でしょうか?その答えは先ほどの鈴木先生が書かれた1枚ものの研究紹介に書いてありました。この紹介のタイトルはスバリ「ヒラメやカレイの眼の偏りが生じるメカニズムを解明」とあります。下図に従って説明していきます。

要約しますと、人間では誕生前に役目を終える体の器官の位置を決定する遺伝子pitx2がヒラメやカレイでは稚魚の段階で再び働き始める。すると視神経の交叉部から脳のねじれが発生し眼が移動を始める。この時ヒラメとカレイでは右眼と左眼の視神経の重なり方が異なる(ヒラメは左目の視神経が上、カレイは右目の視神経が上:上図D参照)ため、ヒラメは左にカレイは右にと眼の付き方が異なることになる、ということです。眼の移動を起こすのは復活したpitx2遺伝子が引き起こす視神経交叉部の脳のねじれであり、移動方向をきめるのは、視神経の重なり方であるということです。視神経の重なり方だけでそれだけ違うのかとも思いますが、さきほどのサイエンスラジオでも同様にいろいろな魚の視神経の重なり方について解説しています。下図をご覧ください。

視神経の脳への繋がり方(視交叉)は左右対称の魚では右型も左型も同数存在します。これに対しカレイは右型、ヒラメは左型でこれがそのまま眼の偏りになります。

いかがでしたでしょうか? 鈴木先生がなぜこのような研究を行っていたのかというと養殖における異形発生の抑制だそうです。養殖環境では天然とは環境が異なるためか、眼の位置が逆のヒラメやカレイが生育してくる確率が高いそうで、眼の偏りのメカニズムの解明ができればこうした問題を解決できるのではないかということから研究を始めたそうです。眼の偏りが逆の魚とは視神経交叉の重なり方が逆の魚ということになるのでしょうか?。かなり以前にこの研究は行われていましたが、果たしてこうした発見は養殖技術向上に結び付いたのででしょうか?

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