かんとこうブログ
2024.07.04
ワニの口は閉じていきそう・・日銀短観の業種別景況感
7月1日に日銀短観が発表されました。2024年6月時点での企業の景況感の調査結果なのですが、メディアが発表するのは、いつも大企業の景況感であり、今回は大企業の非製造業の景況感が久しぶりに前回(4月発表)よりも下がったことがメインに報じられたものと思います。ここではいつものように中小企業の景況感についてお伝えしていきたいと思います。データの引用元は日銀の時系列データサイトです。
まず大企業と中小企業の差異から示します。1983年から2024年までの製造業、非製造業のDIの推移です。
この40年あまり、すべて大企業のDI値が中小企業のDI値を上回っています。中には大企業のDIはプラスでも中小企業のDIはマイナスと言う場合も少なくありません。今回の調査結果も製造業では、大企業のDIはプラス、中小企業のDIはマイナスでした。企業規模の差は交わることのない大きな壁であると思います。
さて、タイトルにつけたワニの口とは、製造業と非製造業の景況感の差異です。下図をご覧ください。
大企業、中小企業とも製造業と非製造業のDIは時によって上下の位置関係が入れ替わります。2005年以降の期間で見ても2009年からの4年間と2020年からの4年間の2つの期間ではほとんど同じような動きをみせて製造業と非製造業のDIが上下しました。リーマンショックの場合もコロナ禍の場合も、その当該年は製造業のDIが非製造業より大きく落ち込みます(赤い楕円で囲んだ部分)。しかしその1年後には製造業のDIがいち早く回復します(青い楕円で囲んだ部分)。ところがその2年後には今度は非製造業のDIが製造業を大きく上まわるようになります(緑の楕円で囲んだ部分)DI値そのものの値には差がありますが、製造業と非製造業の上下関係は全く同じように変化をしています。リーマンショックの例に従うとすれば、この後は両者が歩みより概ね似たようなDI値になっていくのではないかと思われます。つまりワニの口は閉じていくと推定されます。
この日銀短観では、業種別のDI値も発表されています。塗料の需要と関係が深いと思われる中小企業の業種別DIを示していきたいと思います。
図中の数字は2020年以降のDI値の平均です。コロナ禍以降の景況感全体の指数と見ていただければと思います。この中では動きは少ないものの、石油・石炭製品の平均DI値が最も低くなっています。資源価格の高騰、円安による影響が大きいものと思われます。化学が比較的平均DI値が悪くないのは、化学製品中に占める薬の割合が高いためではないかと思われます。
ここで取り上げた業種に中で最もDI値が低かったのは自動車でした。コロナ禍以降半導体をはじめとする部品不足等で回復がスムースに行かなかったことがグラフに現れています。ここまで製造業ではすべての業種でコロナ禍以降の平均DIがマイナスとなりました。一方で、非製造業では二極化しています。DI値の高い業種からご紹介します。
これら3業種は平均DIがプラスでした。なんとなくわかるような気がします。一方で平均DIが大きくマイナスである業種もあります。
この3業種はコロナで最も打撃を受けた業種ということになります。特に宿泊・飲食は3年近く景況感が大きくマイナスとなっていました。以下にすべての業種のコロナ禍以降の平均FDIをグラフで示します。
上述したように、製造業ではすべての業種の平均DIがマイナスですが、業種間の差はさほど大きくありません。一方で非製造業では平均DIがプラスとマイナスに分かれただけでなく、両群の差は非常に大きいものがあります。これから先は、リーマンショック後と同じように、業種間の差が次第に収斂していくのでしょうか?