かんとこうブログ
2024.07.25
盗撮を防ぐ機能性材料・・近赤外線吸収率の話です
本日パリ五輪開幕ですが、先日新聞に「盗撮禁止に新素材」という記事がありました。ミズノが、住友金属鉱山、共同印刷とともにこれまでは完全に防止することが難しかった赤外線カメラによる盗撮を防止できるようになったと報じられました。
下の写真は、従来の生地と開発された新素材を使用した生地を用いたユニフォームについて、普通の写真と赤外線写真でどの程度下地が見えるのかを表しています。
従来のゲームシャツ用生地では困難であった赤外線カメラからの完全な下地隠蔽が達成されています。技術的には近赤外線の吸収能力を高めたことになりますが、ここに使われている材料とその開発経緯についてご紹介したいと思います。少し難しい話ですが塗料にもまんざら関係のない話でもありませんので、じっくりと読んでください。
新聞記事の中で住友金属鉱山が機能性材料を提供していると聞いてある材料を思い出しました。それはホウ化ランタンです。今から20年ほど前に紹介を受けた記憶がありました。フィルムに練りこんでガラスに貼ると室内の温度上昇を防ぐ効果があるとのことでした。調べてみると時代とともに技術は進歩していました。ホウ化ランタンはLB6(6ホウ化ランタン)の商品名で紹介されていましたが、その後の新しい商品としてCWO(セシウムドープ三酸化タングステン)が開発されており、現在の主力商品のようでした。しかし、LB6は緑色を帯びることが、CWOは青色を帯びることが課題とされており、ITO(錫ドープ酸化インジウム)のような透明材料を目指しCPT(セシウムドープ・ポリタングステン)が開発されたと書かれています。以下ミズノの関連サイトから引用してご紹介します。
それではCPTが可視光線と赤外線に対してどのような吸収特性があるのかから見ていきたいと思います。
青色の点線がこれまでのCWO、灰色の点線がITOの可視光から赤外線領域の光に対する透過率を示します。いずれも可視光はほとんど透過し、赤外線光はほとんど吸収することがわかりますが、ITOに比べるとCWOは透過光が青色側に偏っています。これがCWOを使用すると青みを帯びる理由です。住友金属鉱山では、CWOをITOのように無色透明にするため、さまざまな改良を行い、CWOとITOの間を埋めるようにいくつもの物質を開発したと説明されています。
どのようにしてCWOを改良していったのかを説明するため、CWOの可視光線と近赤外線の吸収(反射)がどんなメカニズムによって起こっているか示します。
CWOの改良を一言で言えば、開発の結果CWOの吸収係数の曲線を全体的に右へ移動したということです。ただし、その移動はこれらの吸収が行われるメカニズムすべてに働きかけて改良がおこなわれたということでしたので、その改良経緯を波長の短い順に説明していきます。
可視光の青色領域の光にたいしては以下のように説明されています。(太字は引用です)