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かんとこうブログ

2024.08.05

塗料報知の「2024遮熱塗料・断熱材特集」で気になったこと

ずっと以前の話になってしまいましたが、2024年3月27日発行の塗料報知新聞で「2024遮熱塗料・断熱材特集」の記事が掲載されました。その中でいくつか気になる表現がありましたので、JIS K 5603「塗膜の熱性能ー熱流計測による塗膜の日射侵入比の測定」の制定に携わった一人として苦言を呈したいと思います。あえてそうする理由は、建築・建設業界が見ている塗料業界に対する冷たい視線です。特に「塗る断熱材」という表現に対する不信感です。建築資材としての断熱材は、その体積中に空気を最大限に含有しており、しかもそれをセンチメートル単位の厚さで使用します。それに対し断熱塗料は中空微粒子を含みこそすれ、空気の含有率は断熱材には遠く及ばず、膜厚とてもせいぜい100μmオーダーであり、従って断熱効果としては建築資材の断熱材とは比べようもないほど低いのです。断熱効果を謳うなとは言いませんが、消費者の誤解を招くような表現はやめてほしいと言いたいのです。

それでは以下に気になった表現とその理由を示します。

実際の測定結果として、断熱材と断熱塗料の差異について、(一社)日本建材・住宅設備産業協会で実際に測定した結果がありますのでご紹介したいと思います。JIS K 5603 「塗膜の熱性能-熱流計測法による日射吸収率の求め方」に従い塗膜の日射侵入比を求めた測定結果です。日射侵入比とは、表面に照射された光が照射エネルギー量に対してどれほどの割合で熱として内部に侵入するかという比率であり、反射、放射、断熱などそのメカニズムに依らず一元的に日射による内部への熱侵入を評価できる画期的な評価指標となっています。
断熱塗料の断熱効果と断熱材と比較するため、厚さを変えた断熱材、断熱塗料で基材部を作成し、表面に一般塗料と高日射反射率塗料とをそれぞれ100µmの厚さで塗装した試料の日射侵入比の測定結果を下図に示します。

日射侵入比の測定装置の構造上の制限から、試料の厚さが7mm以上を許容できないため断熱材の厚みは7mmが最大となっています。7mmの断熱材は実際に使用される断熱材の厚さと比較してかなり薄めですが、それでも透過熱量が極めて少ないことがわかります。

断熱材と断熱塗料はそれぞれ4mmの厚さで比較しています。表面に塗装された一般塗料、高日射反射率塗料のいずれの場合でも断熱材の透過性が圧倒的に低いことがわかります。通常、断熱塗料はこれほど厚く塗装されることは稀であり、厚い場合でもせいぜい数百µm程度です。断熱塗料0.5mmの場合、透過する熱量を見ると非常に大きいものであり、一般塗料の日射侵入比とさほど変わりません。

詳しくは下記の資料をご参照ください。

files/files20240701095954.pdf

上述のように断熱塗料と断熱材の透過熱量は大きく異なります。消費者を惑わすような表現はぜひともやめてほしいと切に願います。

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