かんとこうブログ
2024.08.30
日本の場合はさらに「不都合な真実」か?!
昨日、一昨日と塗料全体、建築塗料について、2013年と2023年のひとりあたり塗料消費量を比較して、必ずしも増えている国ばかりではないという「不都合な真実」が判明しました。ただし、ことは重大ですので、正確を期すためにこの度提供してもらったOrr & Bossのデータを使って再確認することにしました。本来確認するためには国別の生産量と金額について2013年から2023年までのデータがあれば良いのですが、あいにく国別データは2019年または2022年以降のデータしかありませんでしたので、世界全体のデータで検証してみることにしました。
世界全体の数量と金額をひとりあたり数量、ひとりあたり金額、単価、人口に分解して推移を示します。
赤い丸で囲んだ部分はいわゆるアフターコロナであり、全体から見ると少し異なる推移となっています。直線近似における傾きから、ひとりあたり数量は約0.1L/年、ひとりあたり金額は約1$/年、単価は0.065$/年上昇しており、人口は約0.8億人/年増加しています。一方CAGR(年平均成長率)は、当該期間中の最初の年と最後の年の数値のみで計算されるため、近似式の傾きとは少し異なる数値になります。CAGRはひとりあたり数量で1.49%、ひとりあたり金額で3.76%、単価で2.23%、人口は1.04%となりました。
これらの数値からは、特に問題となるような「不都合な真実」は見当たりません。やはり国別に見ないと本当のところはわからないということになりました。
国別に関して、日本だけはデータがありますので上と同様に計算してみました。日本のデータは経産省確報の数値を使用しました。
日本の場合も世界と同様にコロナ禍前後がやはり変則的な推移になっていますが、出荷数量と人口が減少傾向にあるというのが世界との大きな差異です。世界と同じようにこれらのグラフから数値を読み取ると、直線近似における傾きから、ひとりあたり数量は約0.1Kg/年減少、ひとりあたり金額は約22円/年増加、単価は約7円/年上昇しており、人口は約29万人/年減少となります。一方CAGRはひとりあたり数量で-0.93%、ひとりあたり金額で1.08%、単価で2.03%、人口は-0.24%となります。
日本の場合には純出荷という数値がありますので、純出荷についても同様にグラフ化してみましたが基本的に上図と同様な結果でした。
ここでそれぞれの要因が数量と金額に及ぼす影響を考えてみます。それぞれの年平均成長率を一覧表で示します。
数量、金額の成長率は、それぞれ以下の式で表されます。
数量の成長率=ひとり当たり数量の成長率+人口増減率
ひとりあたり金額の成長率=ひとりあたり数量の成長率+単価増減率
金額の成長率=ひとりあたり金額の成長率+人口増減率
世界の場合には、ひとりあたり数量が増加する国も減少する国もありながら全体としては、人口の増加もあり、数量、金額ともまずまずの増加となっています。この数値であれば「不都合な真実」と言うべきではないかもしれません。しかし、日本の場合には、出荷金額の成長を左右するひとりあたり数量、単価、人口のうち、二つがマイナスであり、世界との差は開く一方であり、国内市場はこのままでは衰退の一途を辿ることになりはしないかという不安があります。本当の「不都合な真実」とは日本市場の現況かもしれません。