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かんとこうブログ

2024.09.04

台風10号の置きみやげ

超低速で迷走した台風10号は日本列島に大きな被害を残しました。そんな台風10号ですが、おそらく唯一と言ってもよい喜ばしい置きみやげを残してくれました。今日はその置きみやげについてご紹介します。

その置きみやげとは、海水温です。超低速で迷走したおかげで、台風が通過して海域では表面海水が激しくかき混ぜられて海水温が下がっているのです。以前からそのように聞いていましたが、実際に見たことがなかったので、たまたま気象庁のサイト(下記接続先)で日本近海の海水温を確認したら、なんとその置きみやげが見えるではありませんか?

気象庁 | 海面水温に関する診断表、データ 日別海面水温 (jma.go.jp)

何はともあれ、下の9月1日現在の日本近海の海水温図をご覧ください。黒い破線に沿ってピンク色の海域の中に赤い海域が点在しているのが見えると思います。ピンク色は29℃以上、赤い色は28℃以下を表し、台風10号が通過した軌跡に沿って表面海水温が低い海域が存在していることが確認できます。

これはたまたまではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、確たる証拠をお見せします。12日間の海水温の図が動かぬ証拠を示してくれます。8月22日から4日間ずつお見せします。24日までは、この海域に台風10号が到達していません。25日になって初めて台風が見れるようになります。黄色い丸印が台風10号の位置です。

ここまで九州南方海域の水温はすべてピンク一色です。次に26日から30日までの4日間です。台風10号はノロノロと日本に近づいてきます。

ここで地図の下側にある赤い部分をよく見ると台風の動きにつれて少しずつ形が変化していくことがわかります。まるで黄色い台風を追うように赤い部分が左手方向に伸びていきます。これが台風の通過に伴う海水表面温度の低下なのです。台風10号は29日に九州に上陸したあとさらに迷走を続けます。30日から9月2日までの4日間です。

いずれも台風10号の軌跡が赤い帯状に確認できますが、31日が最も明瞭であり、1日にはやや薄くなり、2日には消えかかっています。このことは、台風が表面をかき混ぜて実際に海水温が下がるのには少し時間がかかることと一旦海水温が下がっても、周囲と一体化する中で再び海水温が上昇することを示していると思います。

ここまで海水の表面温度から台風のかきまぜ効果を見てきましたが、温度の絶対値でなく平年値との差でも確認することができます。

これはかきまぜ効果が最も明確であった8月31日の図ですが、さきほどと同様に台風10号の軌跡に沿って、平年値なみもしくは平年値マイナス1℃の海域が存在することがわかります。この置きみやげの効果はどれほどのポテンシャルかはわかりませんが、以降日本に接近する台風の発達を少しでも抑制してくれることを祈ります。

追記:この台風10号による海水温低下については、9月3日のTBSテレビの「ひるおび」でも紹介されていました。説明には、当ブログでご紹介したものと同じ気象庁の図が使用されていましたが、この原稿はその前日である2日に書いていました。3日の朝に掲載することもできたのですが、9月2日の海面温度の図が9月3日の午前11時にならないと発表されないために、一日待って4日に掲載しました。どうしても2日の海面温度図を載せたかった理由は、台風10号により一旦下がった海面温度が、時間とともに戻った様子がはっきりと確認できるようになるからでした。当ブログではテレビで見たことを深堀するケースも多々ありますが、これは自分で見つけたことを書いたものでしたので、言い訳がましく説明をさせてもらいました。

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