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かんとこうブログ

2024.09.26

令和の米騒動・・なぜ米がスーパーから消えたのか?

この夏、スーパーから米がなくなるという「令和の米騒動」が起きました。それ以来、生産量と備蓄量の関係がどうなっているのかずっと気になっていたのですが、なかなかこれという資料に巡り合うことができずそのままにしていました。ところがふと気が付くと農水省が9月17日に発表した「米の需給状況の現状について」という資料が発表されており、それを読んだところ、これまでの政府の見解「米の需給動向については例年と大きな変化はなく、米が店頭からなくなったのは一時的なものであり、まもなく新米が出てくれば落ち着くはず」というのはまさにその通りなのだと納得しました。ただ、これまでのニュースを見ていて思うのは説明が足りません。もっと丁寧に説明しないと国民は納得できないのではないかとも思いました。もっとも、農水省はちゃんと説明したのかもしれませんが、都合のよいところだけ切り取って説明は省略されたのかもしれません。ともかく、この資料「米の需給状況の現状について」(下記URL)について丁寧に説明したいと思います。

https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/attach/pdf/index-249.pdf 

   

まずこの資料は最近の米の需給動向から始まります。要は需要量、生産量、民間在庫量のここ16年間の推移の図とその説明です。

   

  

このように説明されています。

   

「最近の米の需給は、令和5年産米の需要が堅調に推移したことから、令和6年6月末の在庫量は近年では低い水準となっている。一方で、在庫率(在庫量/需要量)でみれば平成23年、24年と同水準であり、全体需給としてはひっ迫している状況にはなく、十分な在庫量が確保されている。既に新米の出回りも始まっているが、引き続き、出荷、在庫等の状況を把握。」
   
この説明を要約すると「去年の需要が堅調だったので、今年の在庫は少々少なくなっているが、過去にこの程度の在庫量だったことが何回かおり、何の問題もなかったので、これが米不測の原因とは考えられない。」となります。そして令和5年以降米の需要が堅調だった理由は以下のように解析しています。   

①食料品全体の価格の上昇が続く中、米の価格が相対的に上昇が緩やか(上図の表参照ください)
②インバウンド等の人流の増加
③高温・渇水の影響により、精米歩留まりが低下(生産量は玄米ベースであり,精米時の歩留まりの低下は必要量増加になる)
   
これらはすでに報道されていることではありますが。一方でインバウンドの増加は全体の0.5%程度にすぎないとの指摘も出ており、国民すべからく納得しているという状況にはなかったのではないでしょうか? 実は、今回の事態を説明するのに最も説得力のある理由が上の図に明確に示されているのにそれが説明されていません。それは米の需要量と生産量が極めて一致していることです。今年を含めたわずか3-4年を除きこの両者は見事に一致して緩やかな減少を継続しています。この意味するところは明白です。毎年過不足がでないようにしているということです。毎年その翌年の需要量を推定し、それに基づき作付面積を精緻に調整しているからです。この作付け面積調整の綿密さについては、別な資料(下記URL)から推定することができます。
   

https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-199.pdf

この資料にはもっと長いスパンでの総需要量と生産量の推移が載っており、過去には生産量と需要量をなかなか一致させられませんでしたが、近年(平成21年以降:上の図の範囲)では極めてうまく調整できているということがわかります。しかも減反制度を2019年に廃止したにもかかわらず、です。

上図には、記憶に残る1993年をはじめとし、1971年、1980年、2003年など天候不順による不作の年が記されており、その前後で生産量が増えただけでなく、政府在庫量が大きく増加しています。そもそも備蓄米はこうした不作の年に備えて、備蓄したものであり、一時的な需給バランスの崩れからの不足に対応するようにはできていないようです。一方で上の図の範囲(平成21年以降)では、政府の備蓄量は100万トン弱の量で一定になっています。つまり米の生産調整はこのところ極めてうまくいっていたのです。

政府は「今年の米作は平年なみであり、米が不足するような事態にはならないはず」と言っています。多少需要が増えても十分な在庫量があって賄えるはずであり、もし大幅に市場で不足するようであれば、市場への供給・流通が滞ったのでしょうか?「米の需給状況の現状について」の資料にはスーパーでの販売量というデータも掲載されていました。(下図)

   

これを見れば、令和6年7月から8月にかけては、前年、前前年を上回る供給量があったことは明白です。決して売り惜しみなどがあったとは思えません。となると真の要因はこの図の上の方に書いてある「令和6年8月は南海トラフ地震臨時情報(8月8日発表) 、その後の地震、 台風等による買い込み需要が発生したこと等により、8月5日以降伸びが 著しい週が3週続いた」というのが令和の米騒動の真因であると思われます。なにせ令和5年の食用米のひとりあたり消費量は年間50.9Kgです。月換算では4.24Kgにすぎません。3人家族が5Kg1袋をいつもより余分に買ったとしても月でみれば約4割需要が増えたことになります。もちろん、国民全部が余分に買ったわけではないのでしょうが、かなりの人がいつもより余分に買えば、米の需給バランスを崩すには十分な量になると思われます。

このところ新米も出回り、需給状況も緩和された感があります。政府の備蓄米はあくまで天候不順による不作への対応であり、実際には、毎年20万トンずつ備蓄され、備蓄機関が5年が経過したものは飼料用に放出されているそうです。となれば今回の米騒動に対し、備蓄米の緊急放出はそう簡単にはできないことだったかもしれないと思いました。政府としては、これまでと同様にお膳立てをして、天候にも恵まれて決しれ不作でもないのに、突然「米がない」と国民が騒ぎ出した・・・と言う受け取り方だとしても不思議はありません。このままだと政府と国民の間に認識の差が生じたままになりそうです。この問題、もう一度どこかでキチンと総括してそれを知らしめておいた方がよいかもしれません。

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