かんとこうブログ
2024.11.01
今年の賃上げ結果は、いかにすごかったか?
10月28日に厚労省から、令和6年の賃上げの集計結果報告(下記URL)がありました。調査対象は常用雇用者数が100人以上の会社を無作為抽出して3622社選び、有効回答のあった1783社の結果をまとめたものです。常用雇用者100人人未満の会社は対象から外れていますので、本当の意味での中小企業のデータではありませんが、参考までにその概要をご紹介したいと思います。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/24/index.html
賃金の改訂を行い、引き上げた会社が91.2%、平均賃上げ額が11,961円で改定率は4.1%でした。労働組合の有無でみると、「改定額、改定率の」いずれも労働組合のある方が高くなっています。また定期昇給を行った会社が管理職に対して76.8%、一般職に対して83.4%、ベースアップを行った会社が管理職に対し47%、一般職に対し52.1%でした。これらすべての数字が昨年を上回っていました。
今年の賃上げがいかにすごかったか?は、こうした数字を見ているだけではわかりません。この1枚のグラフを見てもらえば説明なしに「いかにすごかったか?」を理解していただけると思います。
上図は1999年から2024年までの賃上げ額(棒グラフ:左軸)と賃上げ率(赤線:右軸)を示したものです。1999円から2022年まで平均賃上げ額が5000円、賃上げ率が2%を超えることはありませんでしたが、2023年、2024年と大幅に伸びで、異次元とも言えるレベルになっています。とは言えこれが本来あるべき姿であり、今までがむしろ低迷期が異常に長く続いたという見方が正しいのではないかと思います。
この報告書には今年の賃上げに関するさまざまなデータが掲載されていましたので、その一部をご紹介したいと思います。規模別と業種別の賃上げ額と賃上げ率をご紹介します。規模別と言っても、最小規模でも雇用者が100人以上ですので、本当の意味での中小企業は含まれません。
規模別でみると、最大規模(5,000人以上)の賃上げ額が約15,000円であるのに対し、最小規模の100~299人が約10,000円と最大規模の2/3になっています。このまま線を外挿すると100人以下の会社の賃上げ額は、わずかに10,000円を下回る程度と推測されます。
業種別では、最も賃上げ額が高かったのは、金融・保険業の15,465円、続いて情報通信業の14,989円、学術・研究などの14,772円、電気ガスなどの14,619円、鉱業、採石業などの14,616円と続きます,。逆に低かったのは、医療福祉の6,876円、教育学習支援の7,176円、他に分類されないサービス業の7,353円となっています。医療福祉、教育関係などは、所謂エッセンシャルワーカーに分類されるべき人たちであり、そうした人たちの賃上げ額が低いというのはいかがなものなのでしょうか?選挙中も介護報酬の引き下げが指摘されていました。しかるべく対策が取られるべきと思います。
次にベア(ベースアップ:賃金の土台を上げる底上げ)と定昇(定期的な昇給)の実施状況についてのデータをご紹介します。業種別に出ていましたので製造業のデータをご紹介します。
ベースアップは底上げになりますので、経営者としては慎重にならざるを得ないのですが、ベースアップと定昇を区別している会社では、管理職で80%、一般職で約85%の会社がベースアップを実施しました。また定昇については、管理職、一般職とも定昇制度のある会社の約99%の会社が実施していました。この実施状況も非常に高いと思われます。
最後に賃上げにあたり、重視した要素について、最も雇用者の少ない群(100~299人)の集計結果を下図に示します。
最も多かったのが、企業業績、ついで、雇用の維持、労働力確保・定着、親会社・グループ会社の動向、世間相場、物価動向の順でした。少し意外だったのは前年度動向や労使関係の安定などはあまり重要視されていないことでした。
さてこうして見てきましたが、2024年の賃上げはこれまでの25年ほどを見ても、額、率ともに非常に高いレベルだったことがわかりました。このまま、賃上げと物価上昇がバランスされて好循環となればよいのですが、ここでまたもや緊縮財政、増税方向へ進むようでは、デフレモードへ逆戻りする可能性が大であると懸念します。賃上げを財界にお願いするだけが政治のするべきことではありません。やむなく大幅賃上げに踏み切った経営者の英断に対し、適切な経済政策を実施することで応えることは政治の責務です。