かんとこうブログ
2024.11.22
医療保険の収支について・・かなり驚きました
医療費というのはどのくらいかかっていて、国や地方自治体はどれくらい負担しているのかということを調べてみました。民間の健保は黒字で国保は赤字と言うイメージがありましたが、調べてみると想像とはかなり違う実態がありました。淡々とご紹介したいと思います。資料は厚生労働省保健局調査課の医療保険に関する基礎資料~令和3年度の医療費等の状況~という資料(下記URL)です。
まず、どんな医療保険にどのくらいの人が加入しているかというところから始めたいと思います。
日本は国民皆保険ですので、何らかの保険に入っているはずです。上の表は細かいところを省略していますが、それでもこれだけの保険でほとんどの国民が網羅されていることがわかります。多い順に協会けんぽ、組合健保、国民健康保険となります。それに続くのが後期高齢者医療制度で1843万人もの加入者がいます。つまり75歳以上の高齢者が15%近くに上るということです。
組合健保は、従業員700名を超える企業が結成している健康保険組合の医療保険、協会けんぽは中小企業の従業員が加入できる医療保険、共済組合は公務員の医療保険です。国民健康保険と協会けんぽの違いは、扶養制度があるかないかで、国民健康保険には扶養がありません。
次にそれぞれの医療保険の収支がどのようになっているかという一覧表です。もとの表はかなり細かいので簡略化したものを示します。
収入の内訳は保険料、国庫負担、都道府県負担、市町体負担、後期高齢者交付金、前期高齢者交付金、その他です。
そして支出の内訳は保険給付金と後期老齢者負担金、前期高齢者負担金、その他です。内訳項目が保険金とその給付、国や地方自治体からの負担金だけではないことに驚きました。
前期高齢者負担金なるものは、国保に対して給付され、協会けんぽ、組合健保、共済組合が主として負担しています。後期高齢者負担金なるものは、後期高齢者に対して給付され、協会けんぽ、組合健保、共済組合、さらに国保が負担しています。つまり高齢者の医療に必要なお金を、高齢者以外の医療保険がかなりの程度負担するシステムなのです。本当に申し訳ないながら知りませんでした。
私は高齢者ですが、国民健康保険に加入しそれなりに保険料を納めており、確定申告の際にいつも元はとれていないと思っておりましたが、若い世代の方々がこんなにも(前期)高齢者医療費を負担していただいていたとは知りませんでした。
どれくらいの負担をしてもらっているのかということをグラフにしてみました。左の図は、保険金のうち個人が負担する金額(簡略化のため個人:雇用者=50:50としました)と、保険金全体(国保の場合は国庫負担含む)、さらに保険給付金を並べてみたものです。協会けんぽ、組合健保、共済組合の場合にはいずれも自分で払った保険金と給付金がほぼ同じレベルにあります。ところが国保になると保険金に国庫負担をわせたもの以上の給付金が支払われています。国保の場合、加入者の4割が(前期)高齢者であり、保険金と給付金が釣り合わないそうです。さらに後期高齢者になると保険金は給付金の1割にも満たない額になります。
右図は、これを加入者一人あたりにしてみました。協会けんぽ、組合健保、共済健保では支払保険金と受取給付金がほぼ拮抗していますが、国保と後期高齢者では全く釣り合いません。そしてその分を協会けんぽ、組合健保、共済健保が負担しているという関係になっているのです。
どの保険がどのくらい負担しているかについては下のグラフでわかります。
協会けんぽで後期高齢者に2兆1596億円、前期高齢者に1兆5541億円、組合健保で後期高齢者に2兆133億円、前期高齢者に1兆6379億円、共済組合で後期高齢者に6635億円、前期高齢者に4225億円です。さらに国保については、後期高齢者負担金に1兆7261億円負担しています。 もしこうした高齢者への負担がなければ、協会けんぽ、組合健保、共済健保の保険金はもっと安くなるはずではないでしょうか?
高齢者の立場で何を言っているのかと言われそうですが、高齢者の中にはこうしたことを知らない人も多くいるのではないかと思ったからです。こうした制度になっているには、それなりの理由があり、国会の審議を経て制度化されているはずですが、国民全体のコンセンサスを十分に得ているようには思えないからです。
最近電車の中で優先座席に座り、目の前に年寄が立っていようとそのまま平気で知らない顔をする若い人を多くみかけます。また特殊詐欺グループの掛け子たちは、年寄りが金をため込んで使わないので世の中が不景気になっていると教えられて自分のやっていることを正当化する人もいると聞きました。若者VS高齢者で分断が深まらないために、どのようにことができるのか考えてみたいと思います。